著:村上均、監修:池上裕司
SAPのERPは日本を含め世界中の大企業で使われているが、いかんせん、難しい。ITだけでなく、SAP製品固有の知識、そして業務への理解が必要になる。最近流行りのアジャイルなどとは違う世界だ。
この本はSAP製品とはどのようなもので、どのように導入を検討してゆけばいいのか、実践的な立場から解説したものである。以下のようにERPの中核となる会計とロジスティクスの個別のモジュールの説明がある。全体的にはERPが大半だが、データベースのHANAについても載っているし、ERP以外の製品についてもCRMや人事関連など多少説明がある。
会計管理モジュール:
・FI-GL:総勘定元帳
・FI-AP:債務管理
・FI-AR:債権管理
・FI-AA:固定資産管理
・FI-SL:特別目的元帳
・TR:財務/資金管理
・CO:管理会計
ロジスティックモジュール:
・PP:生産管理
・MM:在庫管理/購買管理
・SD:販売管理
・LE:物流管理
・QM:品質管理
・CS:得意先
・PS:プロジェクト管理
特に、複数のモジュールを組み合わせてどのようなフローでその業務を回していくのか、という図が多く解説されている。自動仕訳の設定方法、パフォーマンスチューニングのポイント、ABAPと呼ぶ開発言語を用いたAdd-on開発の方法といった解説もある。
ERPを導入する場合の標準的なタスクとスケジュールの例が載っているのはとても良い。数年がかりのプロジェクトになるのが普通なので、経験のない人にはこのようなものが無いと非常にわかりにくい。このような点を含め、現場で経験のある人たちが集まって書かれた本なので、参考になる。
単行本、392ページ、秀和システム、2018/12/14