著:ピーター・M. センゲ、訳:守部 信之
「これから本当の意味で抜きんでる組織は、あらゆるレベルのスタッフの意欲と学習能力を生かすすべを見出した組織となるだろう」
「リーダーが持つべき戦略の核心はごく単純なものだ。自分がモデルになるのである」
個人と組織が相互に良い影響を及ぼしあい、成長する方法について様々な啓示をくれる、ピーター・M・センゲの一冊。特に、マイクロワールドの話やリーダシップ、サービス業における組織的な知識の習得とそのフィードバックの構築に関する記述は、鋭く、優れている。
知識が産業の中心的な役割を果たす時代が来たことが叫ばれて久しい。一方で、効率化やコスト削減の圧力が高まっている。
このような中で、堅固なチームワークと長期的な視点での人材育成を得意としてきた日本の伝統的な会社組織は余裕を失いつつあり、今までのやり方の良さを生かしたままより時代のスピードに適した方法へ変革する道をなかなか見つけ出せずにいるようにも思える。
センゲが本書に示しているアプローチは、既にそのような21世紀の産業が抱えるであろう問題点を的確に見通した上で、チームと個人の両方の成長を、短期的な視点でも長期的な視点でも、達成し続けるためのヒントを、多くの読者に与えてくれる。
「国家統制経済が失敗するのは、自由市場体制において機能している多様な自動修正プロセスを分断しているからだ」
組織が対応しなければならない背景となる社会や時代に対する鋭い観察力についても感心した。
単行本、404ページ、徳間書店、1995/6/1