著:ディーン・R. クーンツ、訳:大出 健
「主人公をピンチに追い込む場合、同情するな」
「主人公につらくあたれ」
「困難は主人公の状況をさらに悪化させるものでなくてはならない」
小説家を目指す場合に知っておいた方がよいコツについてまとめたものである。この著者の全作品の出版総部数は2500万部を超えているとのこと。しかし、いきなり成功を収めたわけではなく、6年間便利屋としてポルノなどあらゆるジャンルものを書いて下積みを重ねたそうだ。なるほど、小説家としていろいろなものを書いて様々な経験をしてきたのだなということが納得できる充実した内容になっている。
分量はそこそこあるが、堅苦しい本ではなく、むしろその逆。小気味よいテンポとユーモアとツボを突いた豊富で具体性に富む解説で、かなり楽しく読ませてくれる。
この著者の基本的な考え方は、「読まれるということこそ、文学の存在価値をはかる上での基本的な尺度」である。そして、一般小説、特に長編に取り組むことを励行しており、その理由も書いてある。
一方、SFや推理小説の書き方など、特定ジャンルについても、かなり具体的に書いてある。
「書いて書いて書きまくる」と同時に「読んで読んで読みまくる」ということの重要さについても繰り返し説かれている。
さらに、作家の個性を決める文体の重要性の説明とか、編集者や出版社との付き合い方、Q&A集、読みまくるためのお勧めの小説家リストなどもあり、いたれりつくせり。
少し古い本ではあるが、全体的に、とても面白く仕上がっている。小説家を目指す人にとっても、そうでない人にとっても、一読をお勧めする。
文庫、365ページ、朝日新聞社、1996/7/1