密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

起業家を多く生み出してきた背景を創業者が語る。「リクルートのDNA―起業家精神とは何か 」

著:江副 浩正

 

 リクルートの創業者が、創業からの歩みを振り返りながらリクルートの起業家精神や経営方針について説明した本。

 

「自ら機会を創りだし、機会によって自らを変えよ」

 

 最初に、以下のような経営方針について書かれている。会社は社員が方向性を同じくすることが重要だ。著者はもともとシャイな性格でカリスマ性もあまりなかったので、このような方針を、社訓や社是や心得を文章にして、社員教育にしていたという。

 

経営の3原則

・社会への貢献

・個人の尊重

・商業的合理性の追求

 

経営理念とモットー

・誰もしていないことをする主義

・分からないことはお客様に聞く主義

・ナンバーワン主義

・社員皆経営者主義(社内にスモールカンパニーを設立する)

・社員皆株主

・健全な赤字事業を持つ(新規事業を常におこす)

・少数精鋭主義

・自己管理を大切に

・自分のために学び働く(遊・学・働の合一を理想とする)

・マナーとモラルを大切にする

 

マネージャーに贈る10章

・希望・勇気・愛情

・ネットワークで仕事をすること

・高い給与水準

・人は仕事を通じて学ぶ

・プレイングマネージャー

・まずは周囲に自らを語ること

・数字に強いこと

・努力の継続

・脅威と思われる事態の中に隠された発展の機会がある

・リクルートは社会とともにある

 

成功する起業家の20か条

・気力と体力のある若い人材を集め、目標を共有して事業を推進する

・人がついてくることが大切だが、そのためには自らを磨くこと

・構成メンバーの人物を知り誰にどの仕事をどのレベルまで要求するか

・日本ではじめての事業がよい

・社会の要請に応える事業であること

・多くの資本を要する事業は大企業向き

・時間の有効な使い方が成功のカギ

・失敗を恐れない勇気をもつこと

・若くかつ就職しないで起業すること

・成績や学歴は関係ないが、知識とスキルは必須。事業計画を書く。

・経営哲学を社員と共有すること

・コミュニケーション能力を高めること

・優れた経営者は、話し上手で聞き上手

・起業家に倫理観は重要

・常に健康に留意する

・政治と経済は密接な関係があるが、政治家とは一定の距離を保つ

・起業家は人の能力を精一杯引き出す力が必須

・正しいかを決めるのは顧客であり、常に顧客の声を聞く

 

 森ビルの物置小屋でスタートした頃。初任給を大企業より30%高くして学歴と性別を不問にしたら、それに合った人材が集まったこと。

 創業期には組織人になるつもりがないタレントが多く、彼らをどうまとめていくかが課題だったこと。

 プロフィットセンター制を導入してこの単位で権限移譲を行って高い成果を求めたことで、数百のプロフィットセンターが立ち上がり「リクルートは商売の勉強ができる会社」という評判が立ったこと。

 経営戦略をまとめる「じっくりT会議」。辞表を出した人に面談を行い、改善点を聞き出したこと。QC活動。

 情報誌なので本屋やコンビニにタダで置くことにしてすべて店の売り上げになるようにしたこと。

 自社ビルの推進とそれが新たな担保価値になったこと。タイミングが合わなかった通信などの新規事業の立ち上げ。

  

 実務家らしく、淡々とした調子で書かれあり、無駄が無い。リクルート事件については、読者が知っている前提で多くは語ってない。

 

新書、215ページ、角川書店、2007/3/1

リクルートのDNA―起業家精神とは何か (角川oneテーマ21)

リクルートのDNA―起業家精神とは何か (角川oneテーマ21)

  • 作者: 江副浩正
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/03/01
  • メディア: 新書
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