著:メアリー・バフェット、著:デビッド・クラーク、訳:井手 正介、訳:中熊 靖和
「バフェットの投資は悪材料で売る一般投資家や投信のマネージャの裏をかく戦法だ。そのためには狙った企業の営む事業が健全であるだけでは十分ではない。高収益をあげる能力を秘めていなければならない。単に底値で拾うのが目的ではないからだ」。
バフェットの銘柄投資に関する本はいくつもある。その中で本書の特徴は、バフェットの投資基準をいくつかのポイントに分類した上で、それぞれについての解説とワークブック形式の自習問題でそれを理解するという形になっている点にある。
要点をうまく整理してまとめてあり、分かりやすく、分量もさほど多くなく、最後の方には全体の復習とケーススタディーが3つ載っていて、実践的な構成になっている。少なくとも、他のバフェットの本と組み合わせて読むことで、そのエッセンスがかなり理解できるようになると思われる。
それにしても、どの本を読んでもバフェットの投資の姿勢が終始一貫していることには驚かされる。しかも、そのポイントはそれほど難しいわけではない。にも関わらず、ほとんどの投資家がバフェットにはなれないのは、やはり本書で述べられているようにそれが「動物的本能」に反している上に忍耐を伴うから、ということが大きな理由としてあるのだろう。
それでもなんとかあやかりたいものだが、輸出型産業が中心の日本の市場でこれをやる場合は本書には言及されていない為替リスクの影響という大きな問題がある上に、内需関連の産業においては人口減少が与える業績への影響ということも考えないといけない。はっきりいって、現代の日本の相場はアメリカより難しく、リスクの割にリターンが小さい。よって、現実問題として、日本でこれを応用しようとするのは、アメリカでやるより難しいだろう。
単行本、229ページ、日本経済新聞出版社、2002/5/20