著:本川 達雄
ネズミであろうとゾウであろうと、哺乳類の一生の心臓の拍動数は約20億回。呼吸する回数では約5億回。動物の種類は関係ない。こういったような、生き物のサイズと特徴の関係を説明した本。
肉食獣は草食獣の10倍の行動半径を持つ。一方、草食獣の密度は肉食の16倍ある。飛ぶためには大きなエネルギーが必要だが、速く飛べるのでコスト効率は意外に良い。
体の体重と表面積の関係から計算できる値と、実際の比較グラフが持つ意味は深い。表面積の3/4乗及び体重の1/4乗との比例関係。体のサイズが大きいと、恒温性を保ちやすく、体重あたりのエネルギー消費量が減る。飢えにも有利で、乾燥に強く、捕食されにくくなるため動きはゆっくりでもよい。
一方、体のサイズが小さいと、変異がおこりやすい。このため、適用性は上がる。また、個体での弱さを数でカバーするという生存戦略がとりやすい。
昆虫の話も面白い。サイズから生じる問題をクチクラと呼ばれる殻で覆われることで解決している。乾燥を防ぎ、防御し、骨が無くて済み、表面に気菅系を持つことで肺も不要。しかし、脱皮という危険を経験しなければならなくなった。
バクテリアくらい小さくなると、拡散によって分子が動く恩恵を受けられるので、自分から餌を探さなくてもよい。ウニやヒトデではキャッチ結合組織が大活躍。
1992年に登場して以来、読まれ続けている生物学の名著である。大変面白かった。知的好奇心を満足させてくれる見事な一冊。
新書、230ページ、中央公論社、1992/8/1