「歴史群像」の記事から集めて編纂してある。本書は兵器や戦略や人だけでなく、むしろ、国内・国外のいろいろな政治的な背景や駆け引き、当時の日本の生産力や補給の状況、原爆投下を含む米軍の爆撃戦略の詳細などが複数の研究家の手によって細かく淡々と載っていて、非常に興味深かった。
真珠湾とか硫黄島とか特攻関連の本はたくさんあるけれど、終戦の前後をこれだけ総括的にかつ客観的にまとめた本はなかなか少ないのである。
それにしても、特に戦争の最初と最後の記録をたどる度、もう少しなんとかならなかったものだろうかという思いを抱かずにはおれない。勝ち目が無くなる一方の戦争を、よくもまあここまでボロボロになるまで続けたものだ。
この頃には少しでも国体維持を図るためには右翼側も軍も早期に降伏した方が得策との意見が内々には意外に多かったようだし、天皇も腹は決めていたから、とにかくせめてあと1ヶ月、いや、2週間でいいから早く降伏してさえいれば、広島・長崎の原爆投下も、ソ連の参戦も無く、それだけでも多くのことが違っていた。歴史の針は元へは戻せない。どんなに悔やんでも悔やみきれない、本当に痛ましい歴史である。
ムック、186ページ、学研プラス、2007/08
本土決戦―陸海軍、徹底抗戦への準備と“日本敗戦”の真実 (歴史群像 太平洋戦史シリーズ Vol. 60)
- 出版社/メーカー: 学研プラス
- 発売日: 2007/08
- メディア: ムック
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