著:中野明
テレビ、音楽、映画、ネット、アニメ、雑誌、ゲーム、WEB、モバイル。多様化し、激変するコンテンツ関連業界の動向について解説した本。適時改訂されており、これは第3版である。テーマ別に、見開きで右ページが解説文、左ページがグラフや絵や画面といった構成になっている。
日本の音楽ソフトの売り上げはアメリカの半分の規模ながら世界的には2位。ただし、CDのようなパッケージ販売は低迷し、配信は増えているもののパッケージの落ち込みをカバーするほどにはなっていない。それでも日本のパッケージ販売率はまだ75%もあり、対するアメリカは75%以上が有料配信になっていることから、有料配信化が遅れているといえる。一方、コンサート市場は活況を呈している。ちなみに、著作権収入においてはテレビやラジオの放送も含む52.4%が演奏になっている。
放送業界は停滞気味で、ピークの2007年に比べ5.9%減。番組制作費は、スポンサー→広告会社→放送局→制作会社と流れ、末端の制作現場は苦しい。若者のテレビ離れでテレビ視聴者は今や年配者が中心。テレビ局は動画配信を進めている。録画で見る人が多いので、視聴率にはタイムシフトという概念が取り入れられた。見逃し視聴者向けにキャッチアップサービスもある。
映画の興行収入は2300億円を突破しており健闘している。邦画の復調が大きい。映画を見る層は20~40代の女性が主役になっている。シネマコンプレックス、マルチウインドウ戦略、デジタルシネマが登場。映画製作委員会方式が一般化。制作のための資金集めの手段が多様化して、ファンド方式、信託方式、特別目的会社方式の3つが主流。民間テレビ局が映画産業に深く関与するケースも多い。ビデオソフトは貸出しから動画配信方式へシフト。
ゲーム市場は1兆7000億円規模で、ネットでのオンラインゲーム利用が普及したことで爆発的に伸びている。ゲーム専用機は苦戦しているが、家庭用ゲーム市場全般としては伸びている。SONYはPS4が好調。ネットゲームはアイテム課金が一般化。Eスポーツという楽しみ方も出てきた。
アニメーション市場は2500億円規模。海外市場が急拡大しており、年間200億円規模。紙のマンガは市場の縮小が続いているが、人気作品を生み出す源泉として重要。ネットを通じたマンガ配信は伸びている。
Webコンテンツは多様な事業者が手掛けている。市場は年々成長しており、年間2兆5千億円に迫っている。有料のビジネスモデルと、広告やフリーミアムモデルによる無料モデルがある。日本ではYahoo!Japanが強い。Appleはコンテンツ分野でも圧倒的な強さがある。ネット広告市場は急拡大。
モバイルコンテンツは1兆5千億円に手が届く規模になっている。スマホはテレビに次ぐメディアになり、しかもまだ成長している。SNSはFacebookやmixiは20代以降でよく利用されている。新聞社もデジタルシフトを急いでいる。フリマアプリも人気。女性雑誌のような動画コンテンツも人気。アプリ内広告も利用されている。位置情報の活用、オンラインからオフラインへつなげるO2O。ビッグデータを利用したターゲティング。今やインターネットはマーケティングインフラになった、という指摘も行われている。著作権についての解説もある。
現代のコンテンツ産業の動静に関する情報がコンパクトにまとめられていて、参考になった。
単行本、239ページ、秀和システム、第3版、2017/7/29
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