密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

図解EV革命 100年に1度のビジネスチャンスが一目瞭然!

著:村沢 義久

 

 自動運転とともに自動車産業に革命的な変動をもたらそうとしているEV化の波についてやさしく説明したもの。すべて白黒印刷で、一部例外はあるものの、テーマごとに見開きの右ページが解説、左ページがごく簡単な概念図や関係図や写真という構成になっている。

 

 EVはエンジンではなくモーターで動かす。自動車の作りは簡素になり、制御も楽になる。必要となる部品は大きく入れ替わる。 EVはガソリン車に比べて、パーツが3割減で済むといわれる。本書に記載されている表をさらに少し手直しすると、以下のように変わる。

 

 

EV化で不要もしくは需要が減少するもの

新たに使用されるものもしくは需要が増加するもの

部品・機器

エンジンや関連部品(ピストンリング・点火プラグ)

変速機

蓄電池

半導体

モーター

センサー

素材・資源

ガソリン

オイル

レアアース

リチウム

設備

ガソリンスタンド

充電用設備

 

 世界各国がCO2排出削減の切り札としてEVシフトを後押しし、脱エンジンの動きが加速している。ハイブリッド車もエンジン車の一種とみなされている。日本は水素自動車を推しているが、水素は扱いが難しく、水素を取り出す過程でCO2を排出することもあって、日本以外の国は圧倒的にEVである。

 

 イーロン・マスクCEOが率いるアメリカのテスラが新興メーカーとして大きな存在感を放っているが、世界的にみれば中国が圧倒的に有利な立場にある。世界の工場としての地位を築いた技術力に加え、市場規模が大きいのに自動車普及率はまだ低く、EV化は後発企業中心の中国にとってはむしろチャンスで、中国政府も中国のEVメーカーを積極的に後押ししている。中国は正規のEVだけでなく、「低速電動車」という分野があって、大きな裾野をもち、農家の納屋を改造した小屋を使ったりして数多くの企業が生産を行っている。

  

 EV化はそれまで直接自動車と関係なかった企業がこの産業に参入するチャンスを与えている。中国のBYDは元バッテリーの会社であるし、掃除機などで有名なダイソンも準備を進めている。ソフトバンクの名前も挙がっている。

 EVの部品の中で決定的に重要になる電池のメーカーには大きなチャンスがあるので、パナソニックやサムソンSGIなど多くのメーカーがこの分野に力を入れている。特に、2020年代前半といわれる固形リチウム電池の登場に向けた開発競争は激しく行われている。

 従来の自動車メーカーや部品メーカーにとっては、EV化による革命は大きな転換期になる。トヨタなど日系の自動車メーカーや部品メーカーは、相次ぐ新規参入に対してどのように競争優位を保つのか厳しい対応を迫られる。

 

 EVはモーター制御になるため、自動運転との相性は良い。EV化によって自動車はシンプルになるが、自動運転化はセンサーなどの部品点数を増やす方向になる。

また、EVは充電が必要なことに加え、排気ガスを出さないので、普段家の中に入れたりすることも不自然ではなくなる。コネクテッド・カーとの相性も当然良い。

 コストもだんだん下がってきて、走行距離も伸びてきたが、現在のEVの問題は充電に要する時間。高速充電でも30分はかかるとされる。電池を交換するというのは手間と標準化の面で現実的ではなく、ここがネックになる。充電のための施設もあちこちに必要になる。一方、エネルギーが電気になるので、太陽電池風力発電といった自然エネルギーの利用の流れとの相性は良い。

 

 薄い本で、そんなに詳しいわけではないが、EV化のトレンドや、期待や、課題、日本企業いとってのチャレンジといったことが要領よくまとまっている。

 

目次

序 実はよく知らない電気自動車

第1章 EV革命の衝撃

第2章 脱ガソリンが変わる自動車産業

第3章 中国 急成長するEV市場

第4章 異業種大戦争が始まる!

第5章 テスラの衝撃

第6章 EVを巡る自動車産業地図

第7章 EV革命110兆円市場の衝撃

第8章 EV革命で日本の中小企業にチャンス到来

第9章 技術力で再び日本の黄金時代が来るのか…

第10章 2030年のEV市場を大胆予測

 

単行本、160ページ、毎日新聞出版、2017/12/20

 

図解EV革命 100年に1度のビジネスチャンスが一目瞭然!

図解EV革命 100年に1度のビジネスチャンスが一目瞭然!