密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防

著:奥田 昌子

 

  健康に関する本は、たくさん出ている。なかにはうさん臭いものもある。いや、そういうものの方が圧倒的に多い。本書はBlueBacksが出しているし、本屋でぱっと読んだところ、統計資料がたくさん載っており、それに加えて日本人が他の民族と異なる体質を持っている点に着目しているということで、買った。

 

 日本人と外国人(特に欧米系)との体質の違いについては、よくまとめられていると思った。白人や黒人の体に関する常識が全部日本人に当てはまることはないだろうというというのは、直感的に想像がつくことである。それを、具体的にどういう点が違うのかを明らかにしている点で、読んでよかった。例えば、日本人の結核の発症率は欧米の4倍。胃がん、肺がん、肝臓がんが多い。一方で、皮膚がんは世界で最も少ない国のひとつである。胃の形や胃液の分泌量すら違っている。

  また、白身の魚や大豆や野菜と果物をたっぷりとって、煙草は止めて、お酒も飲まないようにする、ピロリ菌がいるかもしれない人は速やかに退治するというようなことも書かれている。

 

 一方、様々な統計が引用されているのはいいのだが、十分な大きさの母集団を持ったものとサンプル数が少ないものがごっちゃになっているようにも思われる。また、どうしてこの統計値からここまでのことが言えるのか、著者の主張と根拠となる統計値の間にいくらか乖離があるように思われる部分もある。特に、「炭水化物を減らすのは大問題!」とされている主張については、その是非以前の問題として、本書に記載されているデータや科学的事実と照らし合わせて、どうしてこの統計値だけでそこまでの結論が出せるのだろうと、データと著者の主張の関係に関して本書の説明だけでは理解しにくい部分があった。また、食べ物や栄養の摂取との関係の話が多い反面、飲酒と喫煙以外の生活習慣との関係はちょっと見えにくかった。

 

新書、240ページ、講談社、2016/12/14