密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考えており、このブログを立ち上げました。日々読んできた本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介及び読書感想をまとめたブックレビューのブログです。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

検索のためにネットに打ち込む言葉に吐露されている人々の心の闇と本音の解析結果が特に秀逸。「誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 」

著:セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ、翻訳:酒井 泰介

 

 とても面白い本だった。今や多くの現代人は、何か困ったことや、気になることがあると、まずネットで検索する。したがって、スマホやパソコンで、どこから、どういう人が、いつ、どういうキーワードをGoogleに打ち込んで検索しているか、をビッグデータ解析で調べれば、普通の統計調査やアンケートなどではわからない驚くべき人々の本音や本性が見えてくる。著者に言わせれば、現代人は検索を通じて「Googleに告白している」のだ。

 

 例えば、セックス。そして、人種差別。こういったことは、なかなか一般の社会で人々は正直に本音を言えない。しかし、検索結果にははっきりと、人々の心の闇が見える。

 米国の社会調査では、65歳未満の男性は平均して週に1回以上セックスしていることになっている。しかし、実際にGoogleに打ち込まれている検索から見てくる結婚生活に関する最大の不満は「セックスレス 結婚」でありこれは「不幸 結婚」の3.5倍に達しており、「愛のない結婚」の8倍も多い

 未婚のカップルも同様の傾向がみられる。性生活に関する社会調査で未婚男性が申告しているコンドームの年間使用回数は全米のコンドームの販売数より多い上に、未婚者の悩みの検索において「セックスレス 交際」より検索回数が多いのは、「虐待 交際」だけである。

 また、セックスレスの悩みについて検索している女性の数は、男性の約2倍である。

 

 アメリカで人種差別が色濃い場所は南部だと思われているが、Googleの検索を追っていくと、人種差別の意識は実際は南北ではなく東西で違いが大きいことがわかる。オバマが大統領に当選したとき、実は人種差別的要因でなければ説明がつかない理由で4%の票を失っていた。

 トランプ大統領の当選は、世論調査の結果とは違っていて世界を驚かせた。しかし、Googleの検索結果によると、クリントンが勝つと予想されていながらトランプが勝ったアメリカ中西部では、元々、「トランプ クリントン」の方が「クリントン トランプ」より多く検索されていた。また、トランプ支持者が多い地域と人種差別的な「ニガー」がよく検索される地域は一致している。

 

 様々な調査では、ゲイの比率は全人口の2~3%だと考えられてきた。しかし、ゲイ・ポルノに関する検索から推計すると実際はそれより多い5%前後という数字が見えてくる。ちなみに、ポルノサイトの男性の検索上位100フレーズのうち16は近親相姦関連のものである。

 

 

 男は自分のペニスのサイズを気にして、よく検索している。しかし、女性が男性のペニスのサイズについて検索する頻度は男性の170分の1しかない。

 しかも女性がペニスのサイズについての不満で検索していることは、パートナーのペニスのサイズが小さいことではなく、大きくて痛いという方である。

 逆に、検索結果からは、女性は自分の陰部について気にしているのがわかるが、男の方はパートナーの陰部に対して不満を持っている結果はほぼ見られない。

 要するに、男も女も、相手ではなく、お互いに自分の陰部の方ばかり気にして検索しているのである。

 

 暴力映画が卑劣な事件を引き起こすと非難を浴びることが多い。しかし、ビッグデータ分析からは、全く反対の事実が浮かんでくる。暴力映画が公開された週末には、暴力事件はむしろ大きく減るのである。

 時間別の違いも面白い。例えば、「自殺」の検索は午前0時36分にピークに達し、午前9時に最低になる。午前2時から4時は「他の惑星に生命はいるのか」といったビッグクエスチョンが多い。

 

 人の好みは複雑なものだ。仮説や思い込みがあてにならないこと、えてして小さな違いが大きな違いを生むことは、WebサイトのA/Bテストの結果が示してくれる。

 ビッグデータ解析については、他にもある。例えば、宝くじに当たると、近所の人が破産する確率が高まる。有名高校にわずか数点の差で落ちた人と合格した人生の差。NBAの黒人のスタープレーヤーたちは貧困から這い上がったイメージが強くあるが、実際は中産階級の出身の人の方が成功する確率はずっと高い。米国の所得階層が世代によって固定化する確率は、地域差が非常に大きい。大きな大学のある街は芸術分野で優れた人材を生み出す確率が高い。教育に対する投資は中産階級の引き上げには効果があるが、卓越した人材を生み出すこととの関連性は見られない。

 

 借金の返済率が高い人は、「負債なし」「税引き後」「学卒者」「低利率」「最低支払額」といった言葉を使い、借金の返済率が低い人は、「神」「お返しします」「病院」「約束します」「ありがとうございます」といった言葉をよく使う。

 

 ビッグデータの本はいくつも出ている。この本にも一般のビッグデータ解析に基づくものがいろいろ書かれているが、特に、検索に吐露される人々の本音を暴いているところに特徴があり、非常に興味深く読めた。おすすめである。

 

単行本、352ページ、光文社、2018/2/15

誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性

誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性

  • 作者: セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ,酒井泰介
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: 単行本