著:チェット リチャーズ、翻訳:原田 勉
OODAとは、1990年代に、従来の「国対国」の戦争理論だけでは解決できないテロ組織との闘いなどに対応するためアメリカ軍で生まれた理論である。
ただし、この理論に共通するものは、孫氏の兵法、宮本武蔵、第二次世界大戦のドイツ軍の電撃戦、トヨタの経営方式にみられる。
ビジネスと軍事は違うものではあるが、軍事戦略の背後にあるものはビジネスにも応用できるという立場から、本書はこのOODAについて解説した代表的な著作である。
PDCAにおけるP(Plan)は、信頼性の高い計画を立てられるだけの必要な情報と時間が存在していれば有効だ。
しかし、実際には計画に必要な情報が無い状況というのはよくある。不十分な情報で正しいかどうかもわからない計画を立てることに時間とエネルギーを消費した挙げ句に間違った道を歩むということは避けなければならない。
ではどうするか。OODAは、そのような事前に信頼度の高い計画を立てて時間をかけてじっくりゴールを目指すことが難しい分野において有効である。
具体的には、計画に基づく完璧さよりも、現場で観察されるリアルタイムの状況を重視し、スピードと機動力を生かすことによって、競争相手よりも優位に市場を支配することを目指す。そのループは以下のようになる。理想的には、Dは無くてもよい。
相互信頼とお互いに共有された皮膚感覚によって作り出された組織文化とチームワークは、兵士を、戦争とカオスの中でさえ、自発的に行動するように促す。そうしたチームが素早く行動することで主導権を握る。
この方法は競合勢力に対して心理的な優位性も生み出す。そして、一体化した現場組織と、観察によって、臨機応変にミッションを達成するのである。
特に本書では、スピードの重要性が説かれている。意思決定・実行サイクルにおいて優位性を作り出すカギはスピードにある。
攻略する価値のあるギャップが敵(あるいは市場)に存在する場合は、そのギャップは相手が(あるいは競合となりうる誰かが)それに気づくまでの束の間の優位性に過ぎないと考え、そのギャップを突いて一気に攻略する。
致命的な脅威を素早く察知して避けると同時に、敵に対して優位に立てる場所を探査し素早く攻めることで優位性を作り出す。
そのためには、現場の自発性と主導性が欠かせない。何をすべきか迷ったときは、タイムスパンの短縮化につながる行動をとる。
本書は、PDCAを否定しているわけではない。予測可能な分野についてはPDCAで実施し、予測不可能な分野はOODAによって実施することで、「正をもって合い、奇をもって勝つ」ことを目指している。
この本を読むと、OODAループは、スタートアップのビジネスモデルや、IT業界において最近もてはやされている「アジャイル開発」と非常に親和性が高いと感じた。OODAは実はそれほど新しいものではないのだが、最近注目を浴びるようになってきたのは、時代がまさにこのような理論を必要としているというのがあるのだろう。
単行本、350ページ、東洋経済新報社、2019/2/22
OODA LOOP(ウーダループ) 次世代の最強組織に進化する意思決定スキル [ チェット リチャーズ ]
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