密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

図解が多くて薄いので不整脈について基礎的な知識を得るのに好適。「不整脈・心房細動がわかる本 脈の乱れが気になる人へ (健康ライブラリーイラスト版) 」

監修:山根 禎一

 

 不整脈は、心臓の動きのリズムや速さに異常が起き、脈が乱れる状態である。不整脈がすべて病気ということはなく、放置しておいても問題のない正常範囲の乱れが多い。しかし、すぐに死亡につながりかねない病気が不整脈となって表れているものもある。

 

 不整脈について、一般向けにやさしく解説した本。特に、「心房細動」という種類の不整脈にかなりページを割いているのが特徴である。

 

 心臓は、左右の心房、左右の心室の4つの部屋からなる。肺から左心房へ入った酸素をたっぷり含んだ血液は左心室から全身に送られ、大静脈から入ってくる酸素不足の血液が右心房から右心室に入り肺に送り出される。心臓は電気の刺激によって心筋が収縮を繰り返すことで動く。この電気信号に乱れが生じたり、心臓そのものの不具合があると、不整脈が生じる。

 

「心房細動」は「心室細動」に比べればすぐに命を失うことはないが、放置すると進行し、慢性化し、脳梗塞や心不全につながる。従来は完治しない病気とされてきたが、今はカテーテルアブレーションという手術がある。これは、カテーテルを入れて肺静脈の入り口を焼灼したり、バルーンのついたカテーテルで静脈の入り口を帯状に治療するものである。慢性化する前であれば成功率は高い。手術は行わず、抗凝固因子の働きを弱める働きの薬で脳梗塞の予防を行ったり、レートコントロールを行う薬で心拍数を減らす場合もあり、治療方法は患者それぞれの状態で決める。

 

 心房細動以外の上室性不整脈には、房室結節回帰性頻拍、心房粗動、WPW症候群、心房頻拍がある。

 徐脈の場合は、ペースメーカーが唯一の治療手段になる。徐脈は同不全症候群か房室ブロックの2種類ある。軽度であれば治療は見送る。ただし、ペースメーカーでは心房細動は治らない。

 

 心室の頻脈は、危険なものが多い。中でも、「心室細動」は、突然死に結び付きやすい。その多くは、心筋梗塞あるいはその前段階で冠動脈の中のプラーク(付着物)が破裂する不安定狭心症、心筋の動きが低下する心筋症がある。遺伝性のものもある。

 

 心室細動を起こしたことのある人や、心室頻拍をよく起こす人は、ICD(植込み型除細動器)の使用を検討する。これは、コンピューターが内蔵された機器で、心臓の状態によって自動的に適切な電気刺激を送り出すものである。状態によっては、ペースメーカーとしても機能する。

 

他の生活習慣病と同じく、減塩、食べ過ぎない、運動、禁煙、快眠、節酒、ストレスをためない、といったことは効果がある。また、緊急時に備えてAEDがおいてある場所が時々あるが、AEDは心室細動が起きていなければ作動しないようにできているので、原因がはっきりしなくてもためらわずに使った方がいい。

 

 図解が多く、文章量は少なめ。ページ数も100ページを切っている。特に前提条件なしに読める。不整脈についての基礎的な知識を頭にいれておきたいという人には向いている。

 

単行本、98ページ、講談社、2018/9/13

不整脈・心房細動がわかる本 脈の乱れが気になる人へ (健康ライブラリーイラスト版)

不整脈・心房細動がわかる本 脈の乱れが気になる人へ (健康ライブラリーイラスト版)

  • 作者: 山根禎一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/09/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)