(著:臼田 孝)
1mの長さを正確に伝えるため、長く国際メートル原器が長さの基準になっていた。しかし、1983年から、光が真空中を伝わる行程を基準にするようになった。このように、精度を少しでも高めるため、科学の進歩によって単位の基準が変わってきた。
2018年11月には、いまだに原器が基準になっている質量の定義も国際度量衡会議で公式に変わる見通しだという。それも加えると、国際単位系の基本7単位の定義は次のようになる。
・長さ(m):単位時間に光が真空中を伝わる行程の長さ
・質量(kg):プランク乗数の値を正確に定める。
ことによって設立される。
・時間(s):セシウム133原子が発する電磁波の固有の周期
・電流(A):真空中に1メートル間隔で平行に配置された無限に細く無限に長い2本の直線状導体が一定の力を及ぼしあう電流(真空の透磁率を規定)。
・熱力学温度(K):水の三重展の熱力学温度の1/273.17。
・物理量(mol):0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数に等しい数の要素粒子を含む系の物理量。
・光度(cd):周波数540x10**12ヘルツの単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が1/683ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度。
量子力学。相対性理論。ジョセフソン効果。量子ホール効果。時間はセシウム原子時計で行くところまでいったと思ったら、「光周波数時計」という新たな原子時計に期待が集まっている。質量についても、E= hf = mc**2 の関係から、m = hf/c**2 で求まる。ここでfは電磁波の周波数、hはプランク定数、Eはエネルギーである。
理科系以外の人でもわかるように、数式は最小限にしてある。ただ、ブルーバックスシリーズの一冊であり、誰でも読めるというほどはやさしくはなく、多少の歯ごたえはある。個人的には、基本7単位のうち唯一人間の感覚に沿って決められているカンデラの測定方法について、「ここでは詳述する余地がありませんが、世界のNMIでは今も測定方法の開発が続いています」と割愛されているのが少し残念だった。
新書、246ページ、講談社、2018/4/18