密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考えており、このブログを立ち上げました。日々読んできた本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介及び読書感想をまとめたブックレビューのブログです。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

日本の納税者 (岩波新書)

著:三木 義一

 

 日本の税制の様々な問題の背後にある「お上おまかせ税制」の実情と変遷について説明した本。

 税制についての法律の文章はわかりにくいし、税務署の対応には法律に明確にそう書かれているわけではない解釈が多いし、税理士制度にはいろいろな問題があるし、弁護士には税の専門家は少ないし、裁判に持ち込んでも国に勝てる確率はとても低い。そもそも、終戦後のGHQが読んだシャウプ使節団の指導によって賦課方式から申告方式に変更されるなど合理的に大きく変えられたところもあるけれど、「お上」が決めるものという税についての概念的なものは納税者側に根強く残った。また、日本の給与所得者は源泉徴収と年末調整によって強制されていて、こういったことが税に対するお任せ意識を熟成してきた。

 OECDの国際比較によると日本の国民負担率はアメリカや韓国ほど低くはないものの、ヨーロッパ諸国やカナダやニュージーランドなどに比べると低い。だが、税がどう使われているのかという透明感は低い。このため、国際調査によると日本人の重税感のはかなり高いようだ。

 著者は、日本人は長年、お上にお任せで税金や年金のことをあまり知らなくていい源泉徴収や年末調整のような制度や、事実上ほとんど税務署の指導の通りに従わざるをえないような仕組みに込まれてきたことこそが大きな問題だと考えているようだ。そして、払わされる「義務」としての納税ではなく、使い方のチェックも含めた民主主義国家の主権者として税制のあり方について積極的にかかわっていくべきだと主張している。

 戦後の税制がどのように変わってきたかということも適時説明されている。予想とは違った本だったし、正直、ピンとこないことも多かったが、知らないことは多かったし、日本の税制を少し違った角度から見てみるということではそう悪くない本だった。ただ、ではどうすればいいかという点については、納税者権利憲章の実現などの他にも、もう少しいろいろ踏み込んで意見を書いてもよかったのではないかと思う。

 

新書、224ページ、岩波書店、2015/5/21

日本の納税者 (岩波新書)

日本の納税者 (岩波新書)

  • 作者: 三木義一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/05/21
  • メディア: 新書