密林の図書室

日々読んでいる本の読書の備忘録を兼ねたブックレビューのブログです。英語教材も含まれます。日々、様々な本を読んでいます。読みっぱなしにするのではなく、アウトプット化することも本との対話の一部と考えており、このBlogを立ち上げました。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書を通じて多くのことを学び、それは自分にとって目に見えない財産になっています。 尚、過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載しているものもあります。未掲載のものは「Amazonレビュー欄未掲載」のカテゴリーを参照ください。

IoTで激変するクルマの未来

著:桃田 健史

 

 「コネクテッド・カー」には2つの領域があるという。まず、ITS(高度道路交通システム)に属するサービスで、具体的にはETC, VICS(交通情報), ACC(車間制御装置)などを指す。もうひとつは、インフォテーション(Inforamtion + Entertainment)分野で、音楽、映像、SNSといったもの。

 トヨタビッグデータで集めたデータをクラウド連携し、あいおいニッセイ同和損保がテレマティクス保険を出す。これはPAYD(Pay As You Drive)という走った分だけ保険の進化形になる。

 Googleはクルマに乗っている人の動静が欲しいから、車載OSのデファクトスタンダードを狙う。Googleにとってはクルマは大きな通信装置。そして、OAA(Open Automotive Alliance)を立ち上げる。Appleも「iOS in the car」を発表し、具体的なサービスとして「カープレイ」を出す。トヨタはAGL(Automotive Grande Linux)構想を推進している。車載OSの分野では、現在、カナダのQNXが主流。トヨタは、フォードが開発したSDL(Smart Device Link)の利用で合意する。一方、Googleが使えない中国では百度スマートフォンと連携する車載システム「カーライフ」を開発している。ただし、コネクテッド・カーはハッキングの危険をはらむ。

 軍事用センサー技術などを活用しているイスラエル企業。ダイムラーアウディBMWが買収した地図情報会社「ヒア」の価値。ライドシェアのビジネスモデルを築いた「ウーバー」。同様なビジネスをしている「Lyft」には楽天が360億円を出資。アジアのライドシェアに対してはソフトバンクが「オラ」や「グラブタクシー」に出資している。メルセデスは路上駐車によるカーシェアリング「Car2Go」をはじめた。「ニューモビリティ」による新しい時代の移動と交通のあり方が模索されている。

 自動運転の分野も熱い。トヨタはDSRC(760MHz帯の狭域通信)を利用する「ITSコネクト」を発表。日本政府は2020年までのクルマの自動運転の実用化を目指してイノベーション推進を後押ししている。ただし、独自戦略はガラパゴス化の危険もはらむ。トヨタメルセデスBMWと提携しているバイドゥシリコンバレー人工知能開発拠点を作る。アウディはナパバレーにあるサーキットで「人間vs自動運転」を体験できるようにしている。ただし、自動運転と無人運転の定義は異なる。自動車メーカーはいざとなれば運転可能な人が載っていてオーバーライドできる自動運転だが、Googleが目指すのは無人運転の方だ。アメリカでは自動運転専用の免許証も検討されている。アメリカは業界からの圧力を受けて、自動運転の標準化を狙っている。ドローンでも同様だという。

 エコカーも戦場になっている。アメリカのカリフォルニア州が定めるZEV法と連邦政府による燃費とCO2の規制であるCAFÉ。COP21で採択された「パリ協定」も今後は影響するだろう。ジャーマン3は「48Vバッテリー」によって大型車でもアイドリングストップを安定的に行うことを研究している。中国もZEV法に類似した法規制を検討している。一方で、アメリカは燃料電池車に対しては保守的であるという。

 日本では自動車好きの多い団塊の世代がクルマに乗らなくなる2025年問題が控えている。高度運転支援システムは高齢ドライバーの支えになる可能性があるが、自動車メーカーは高齢者向けのクルマというアピールはしていない。2015年から実用化がはじまったETC2.0はデータ通信の機能が拡張され、ITSスポットと呼ばれる情報データ用のアンテナとも通信する。超小型モビリティの車両規制の決定が遅れ、電動クルマ椅子がグレーゾーンに存在するという現状もある。著者は、人口減少時代の「モビリティミックス」や「スローモビリティ」を唱える。カーディーラの立場に与える影響についても言及されている。

 IoTの本としては少々肩透かし感があるが、クルマの未来の方向性と可能性を語った本だと割り切って読むならば、よく取材してあるし、結構詳しくて面白かった。自動車関係者は生き残りのために大変だろうし、特に厳しい国際競争に直面する日本の自動車業界の立場を考えながら切迫感を持って書かれている部分は多くある。しかし、セキュリティなどの不安はあるにしろ、利用者目線に立てば、クルマの将来に対して期待の持てるように思えることも含まれているような気がした。

 

単行本、239ページ、洋泉社、2016/2/10

 

IoTで激変するクルマの未来

IoTで激変するクルマの未来

  • 作者: 桃田健史
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2016/02/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)