著:松本俊彦
「くれぐれも、ここに書かれたことをすべて実行しようとしないことです。大切なのは、自分にとって都合のよいものだけを採用すること、すなわち、『イイトコ取り』です。そして忘れないでください。嫌なものを嫌といい、納得できないことには従わず、苦手な人を避けることは、生き延びるうえで必要な技術である、ということを」。
自殺を考えたことのある人は意外に多い。平成28年の厚生労働省の調査によると、23.6%に上る。実際の推移をみると、平成21年に3万人を超えたわが国の自殺死亡者数は平成28年には21,897人まで減ってはいある。しかし、以下の表のように、人口10万人当たりでみると、10代の自殺者死亡率には変化が見られないという。
表:人口10万人あたりの自殺死亡率
|
平成21年 |
平成28年 |
50代 |
38.5% |
23.6% |
20代 |
24.1% |
17.6% |
10代 |
2.4% |
2.4% |
※本書より。警察庁自殺統計原票データによる
自傷や自殺のきっかけは表面的なもので、実際の原因はそう単純化できない。ただ、生活面での問題、社会・経済的な問題、メンタルヘルスの3つの問題が一線を越えやすくする要因になるようだ。
特に問題なのは、一人で苦しむこと。「助けて」が言えない、本音を簡単には明かせない苦しみがある。閉じた中で、悪循環がおきる。近い関係ほど、泥沼化しやすい。
よい聞き手は必ずいる。すぐダメ出ししたり、自分の意見を押し付けたり、無遠慮な質問ばかりするような「悪い聞き手」はさっさと見切る。地域の保健センター・保健所、精神保健福祉センター、子ども家庭支援センター、BPD家族会といった場所に相談してみる。「してはダメ」ではなく「できること」を増やす。
周囲の人は、追い詰めるような言動を控え、行動の裏にある思いに耳を傾ける、他の選択肢を一緒に考えて提案してみる。決して指図しすぎてはいけない。
自傷をとどめるためには、記録をつけたり、より安全な方法で不快感を逃がすようにしたりする。身近な人との間に問題がある場合は、離れてみることも重要。
リストカットなどの自傷や自殺について、イラスト中心にわかりやすく簡単にまとめた本。とてもやさしく書かれてある上、書かれてあることを全部実行しなくてもいい、いいとこ取りで構わないと、書かれてあることが一部でもいいから何らかの歯止めになって欲しいというような著者の気持ちが静かににじんでいる。学校で行われている「命の教育」は必要な子には届きにくい、と指摘している部分もある。
単行本、102ページ、講談社、2018/2/15
自傷・自殺のことがわかる本 自分を傷つけない生き方のレッスン (健康ライブラリーイラスト版)
- 作者: 松本俊彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/02/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
自傷・自殺のことがわかる本 自分を傷つけない生き方のレッスン (健康ライブラリーイラスト版) [ 松本 俊彦 ]
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