密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

正倉院宝物: 181点鑑賞ガイド

著:杉本 一樹

 

 正倉院奈良市東大寺にある校倉造りの宝物殿。聖武天皇の冥福を祈念して、光明皇后東大寺の廬舎那仏(るしゃなぶつ)に奉献した数々の宝物が収められている。天皇・皇后の書、仏具、装身具、染織、調度品、飲食具、楽器、文房具、儀式用品、遊戯具、武器、薬物など、その総数はなんと約9000点にのぼるという。

 本書は、この正倉院の宝物から181点を選び、すべてカラー写真付きで紹介した本である。それほど大きいサイズの本ではないが、少し横長になっている。有名な「螺鈿紫檀五弦源琵琶」「金銀平文琴」のような楽器や「鳥毛立女屏風」のような絵。「漆胡瓶」の本体は木製だという。「玳瑁螺鈿八角箱」の豪華な文様は玳瑁というウミガメの甲羅である鼈甲が使われている。「粉地彩絵八角几」の唐風のグラデーションは鮮やかだ。「漆金薄絵盤」は木製の蓮弁を32枚がついていてきらびやかな絵が描かれている。「金銀鈿荘唐大刀」の装飾は見事である。

 宝物の写真の解像度や色彩が良く、ビジュアル的によく考えられた構成になっていて楽しめる。解説文は適量で、多すぎず少なすぎず。つい、豪華な品々の方に目がいってしまうが、特に、「国家珍宝帳」と「大小王真跡帳」の重要性を説いた解説文などは説得力がある。正倉院の宝物入門としては、好適であるように思われる。

 

単行本、159ページ、新潮社、2016/10/31

 

正倉院宝物: 181点鑑賞ガイド (とんぼの本)

正倉院宝物: 181点鑑賞ガイド (とんぼの本)

  • 作者: 杉本一樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/10/31
  • メディア: 単行本