著:石山 永一郎、沼田 清
太平洋戦争についての本は無数にあるが、この本は戦争の過程部分は要約のみとし、開戦に至った経緯(1941年7月28日~1941年12月8日)と終戦前後の期間(1945年7月16日~1945年9月15日)に集中して書かれてある点に特徴がある。まとめ方も、1日2ページずつ取り上げる形式をとっている。小ぶりの新書サイズで、白黒印刷だが、写真はそれなりに多く掲載されてはいる。1945年8月27日の日満パルプでの事件など、戦後も多くの犠牲と混乱があったこともきちんと取り上げられている。
あの戦争について考えるとき、なぜあの戦争は起きたのか、なんとか避ける方法はなかったのか、敗戦についてももう少し早く終わらせることはできなかったのか、おそらくこういったことはすべての人が一度は考えることであろう。この本は、ほぼ開戦までの道のりと終戦前後に集中する形になっているので、そういった基本的な疑問に向かい合う上で、リファレンス用と利用するために比較的適したものになっているということはいえる。
6人の識者のインタビューも掲載されている。個人的には、必ずしも無批判に受け入れるべき意見ばかりではないとは思ったが、そのような点も含めて参考になるところは十分あると思う。
本書の後半部分を読めば改めて気づくが、朝鮮半島の38度線をはじめ、その後のアジアの勢力分布図と秩序には、よくも悪くも、この日本の敗戦を機に決められたことや、大日本帝国という大国がこの地域から消滅したことが引き金となって生じた混乱の流れの延長線上で動いたことがたくさんある。過ちを繰り返さないということはもちろんあるが、本書で保坂氏が述べているように、歴史は全く同じ型では繰り返さないものであり、単にそれにとどまらない教訓をきちんとくみ取って応用が利く形で未来に生かしてゆくことが重要なのだろう、と思いながら本書を閉じた。
新書、254ページ、文藝春秋、2017/8/18