密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

コピーキャット―模倣者こそがイノベーションを起こす

著:オーデッド・シェンカー、訳:井上 達彦、遠藤 真美

 

 イノベーションを称揚する本はたくさんある。そこで取り上げられている事例の多くは、ユニークなビジネスモデルや、尖った発想と技術である。しかし、本書はそれらの本とは異なり、あえて模倣に焦点を当てている点に特徴がある。

 多くの人や企業がイノベーションという考えに魅了され賞賛している一方で、模倣にはどこかマイナスのイメージがつきまとう。しかし、実際はどうか。ディズニー、VISA、IBM、ウィルマート、アップル、グーグルというような優れたイノベータと思われている企業も、模倣者としての歴史を持つ。

 

 本当に画期的なイノベーションは、ビジネスとしての成功率は高くない。何もない道を切り開くイノベーションは、より多くの投資や試行錯誤や時間を必要とする。創造者は時に自己満足に陥ることもある。

 だから、歴史を振り返ると、最初の発明者が模倣者に追い抜かれてしまった例は枚挙にいとまがない。

 

 一方、模倣はリスクが低く、投資も時間も抑制でき、既に市場がある程度見えており、プライドに縛られず先行商品を分析して問題点を改良する謙虚な姿勢をとりやすい。特許制度は完璧ではなく、社員の転職などで機密情報は洩れやすい。技術の進歩により模倣は年々簡単になり、コピーが出回るまでに要する期間も短くなっている。

 著者の主張で特に注目したいのは、模倣とイノベーションは対立するものではないと強調している点であろう。

 実は、模倣は創造と密接な関係がある。著者は、模倣+イノベーション=イモベーション(日本語ではあまり座りのいい表現ではないが)という説を展開している。

 

 そもそも、模倣は学習において欠かせない重要な過程である。優れた模倣者は学んだ成果を根気強く新たな改良や創造につなげてイノベータとなってゆく。人類の文明も文化も、そのようなプロセスを踏んで継承され改善され発展してきたのだという。

 表面的な模倣だけでは失敗に終わることが多いことも示されている。結局、模倣を通じて勝者になるには、オリジナルの成功要因の複雑な背景を十分に研究分析し、良い部分だけを慎重に取捨選択したり、他のサービスを組み合わせたり、異なる市場や分野に応用したり、新システムを導入して大幅なコスト削減を実現したり、組織の意思決定を早くして素早く新製品を投入展開したりといった、新たな工夫の積み重ねや戦略や付加価値の追求が必要になる。

 優れた模倣者に必要な能力と優れた創造者の能力には共通点が多い。模倣がイノベーションの原動力になることもある。

 本書にもあるように、多くの日本企業は欧米企業の模倣からイノベータになり、今は韓国や中国の模倣に苦しんでいる。

 イノベーションの重要性は今後も変わらないが、歴史上多くの創造者が模倣者に追い抜かれてしまったように、それだけに前のめりになりすぎたビジネスモデルは危うさもはらむ。そもそも、純粋な意味での創造は滅多にあるものではない。

 我々は夢のようなイノベーションの成功物語に惹かれやすいが、本当に重要なことは「競争優位」を築くことであり、そのためには継続的な研究や学習によって模倣と創造を効果的に組み合わせてゆくのがよい。

 

 いろんな意味で、創意工夫のあり方やそのために必要ことは何なのかということについて深く考えさせてくれる本だ。尚、終盤には日本企業について取り上げた特別寄稿もある。

 

単行本、253ページ、東洋経済新報社、2013/2/1

コピーキャット―模倣者こそがイノベーションを起こす

コピーキャット―模倣者こそがイノベーションを起こす

  • 作者: オーデッドシェンカー,Oded Shenkar,井上達彦,遠藤真美
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2013/02/01
  • メディア: 単行本
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