密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

経営の神様の前向きで小気味よいアドバイスの数々。「ジャック・ウェルチの『私なら、こうする!』」

著:ジャック ウェルチ、スージー ウェルチ、訳:斎藤 聖美

 

「次の時代に伸びると予想される分野は何かをぜひ話してあげて欲しい。だが、大好きなことをやるべきだよと、もっと強く話して欲しい」。

 
 引退後にいろいろな人から相談を受けた回答集を本にしたものである。以前読んだ「わが経営」のような大書ではないので、気軽に読める。一方、ウェルチの自伝を読んでいるのとは違う実用性もある。経営の神様だった人が、多くの人に共通する悩みに答えてくれているのだから。

 

 とにかく、徹底的に前向きで、実戦的で、読者を励ますのがうまい。だから、こう言い切っている。

「喜んで教えてくれる人から、あらゆる機会を捉えて学ぶこと」

「誠実さ、知性、精神的成熟度の三要素は基本」

「勝つことの根底には、自分の人生で何かを作り出すことがある」


 並みの人なら慎重に言葉を選ぶであろう、若い人の起業したいという相談に対しても、ウェルチの答えは違う。

 

「チャンスをとらえ、一発ホームランを狙うなら、今しかない。一軒家を郊外に持ち、二人の子供の学費を払うようになったら、冒険はできないんだぞ!」。

 
 一方、流石は経営の神様、と関心する達観も多く見られる。

「ひとつ大きな、あ、そうか、をつかんだら、戦略なんて単に方向性を示すものでしかない」

「自分より優秀な人たちを管理するのは、他の並みの社員を管理するのとなんら変わりない」

 

今も多くの企業経営者の相談に乗っているだけあって、時流も鋭く見ている。

「とりあえず中国に進出してみようと考えた企業の屍が山と転がっているのが実情」

「規制は官僚主義の象徴だと悪く言ってきたが、外国投資家にとって、ロシアに関する限りはまったく逆だ」

「IT業界で低成長分野にいれば、値引き競争という名の地獄にあっという間に落ち込んでしまう」

「政治の世界は非効率に満ちている。これからもずっとそうだ」

 
前向きで、具体的で、自信をくれる。若い人から、幹部レベルまで、広い人に参考になる書であろう。

 

単行本、296ページ、日本経済新聞出版社、2007/4/20

 

ジャック・ウェルチの「私なら、こうする!」

ジャック・ウェルチの「私なら、こうする!」