密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

英会話ペラペラビジネス100 - ビジネスコミュニケーションを成功させる知的な大人の会話術 [CD2枚付]

著:スティーブ ソレイシィ、ロビン ソレイシィ

 

 まず、何も見ずにCDをざっとShadowingして「表現少ないし、しゃべりも遅いし、簡単すぎる。失敗だったかな」と始めは思った。だが、そうではなかった。本を開いて狙いがわかった。

 ひとことでいうなら、この教材は、「日本でいうビジネス英語は、世界から見ると単に小難しい英語だ」という著者の考えに基づいて作られている。したがって、難しい内容ではなく英語のレベルとしては英検3級もあれば十分というものなのだが、たとえ英語がそれほど流暢でなかったとしてもその範囲で使える英語を目指す、という狙いの教材になっている。

 例えば、普通、この手の本は自己紹介の仕方から始まるけれど、本書は、相手の言っていることがわからなかったときにどうするか、から始まっている。これはとても大切なことだ。なぜなら、英語力が低いうちは相手の言うことがわからないという状態が普通なので、なによりも、相手の言っていることがわからないときの表現や対応こそ、初心者が覚えるべきことである。自己紹介についても、単に英語の表現を書いてあるというのではなく、握手の仕方とか、そういうことにもかなり言及している。挨拶は言葉自体が目的ではなく、互いに知り合うことこそが重要なのだから、このようなアプローチは理にかなっている。

 とにかく、わかったふりしないでわからないことはきちんと確認する、英語力が低くてもしっかりコミュニケーションする、まず使いまわしの利く表現を優先して徹底して覚えて実戦で使えるようにする、失礼な表現を避けること、何があってもS+Vを中心とする英語の語順だけは忘れないようにする。そして、易しい表現でいいから、しっかりつないで流暢にしゃべること、と激励している。

 

 

 「日本でいうビジネス英語の本には結構笑わせられてしまいます」というネイティブスピーカーの著者の切り出しは、読み進めるにつれて説得力が出てくる。そういう意味では今まで流通していたビジネス英語の教材の罪は深いかもしれない。

 より具体的には、「だれだれにつなぐ、代わる、何番に回す、と言いたいとき、ひとつずつ別の表現を覚える必要はない」「たくさんの...と言いたい時は、muchとmanyの代わりにすべて、a lot ofを使ってください」「応用性の低いmuch,too,veryよりreally」「付加疑問文はコミュニケーションに不可欠ではないし、そう使わない。でも、It's...形容詞isn't it?だけ覚えれば役に立つ」。「Do you haveを甘く見るな」等、徹底的に実用で使える英語、そしてがんばれば手に届く英語を鍛える1冊である。

 日本人の苦手な部分をよく研究して書かれており、その点でもおススメである。但し、実際の外人は早口でいっぱいしゃべるし、単語は単語で知っていないと意思疎通ができないので、リスニング用の教材及びボキャブラリ教材と併用すべきだろうと思われる。

 

単行本、246ページ、アルク、2002/3/16

 

英会話ペラペラビジネス100 ? ビジネスコミュニケーションを成功させる知的な大人の会話術 [CD2枚付]

英会話ペラペラビジネス100 ? ビジネスコミュニケーションを成功させる知的な大人の会話術 [CD2枚付]

  • 作者: スティーブソレイシィ,Steve Soresi,ロビンソレイシィ,Robin Soresi
  • 出版社/メーカー: アルク
  • 発売日: 2002/03/16
  • メディア: 単行本
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