密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造

著:篠田 謙一

 

「DNAの物語る歴史は、個人が持つDNAに刻まれた人類の歩みを手がかりに話が組み立てられていますから、必然的に私たち人類すべてが歩んできた道、日本人すべての成り立ちの物語となるのです」。


 現在、日本人と呼ばれるわれわれの祖先がたどった道を、主にミトコンドリアDNAの情報を中心に、一部Y染色体遺伝子から得られる情報や、それ以外の考古学的な研究成果を突き合わせて考察しながら、アフリカを出た人類の壮大な旅路とともに解説した本。ヨーロッパ、インド、北米や南米、アジア各地など、最初の100ページはむしろ日本から遠い地域の話が中心である。後半は、東アジアさらに日本に関する比重が増えてゆく。

 旧人を除く我々人類は大きく4つのグループに分けられるが、そのうち3つはアフリカにあり、残りひとつがアフリカだけでなくヨーロッパやアジアや北南米にも広がったこと。そもそも、人類の中の遺伝子の相違はわずかであること。東西の遺伝子の分布のそれぞれのおおむねの境界がインドになること。漢民族は遺伝的には南北で異なる集団であるといえること。狩猟や農耕や地球の変化と人類の移動の変遷の関係。東アジアの各地域と日本人の遺伝子の分布から見えてくる発見。

 

「私たちはしばしば国の成立と、集団としての日本人の成立を同じものとみなすことがありますが、このように見ていけば、両者は分けて考えるべきものであることが分かります」。


 DNAの系統分布、地図、グラフなどの資料も適時入っており、遺伝子解析以外の情報や諸説についても触れながら、雄大なスケールの人類の歴史について、研究者の立場から慎重かつ丁寧に解説が行われている。

 

 これはもう少し古い本であるため、その後の研究で最近はさらに詳細にわかってきていることや訂正されていることもある。例えば、ヨーロッパではネアンデルタール人と新人類が1万年にわたって共存していたのに遺伝子の交わりは無かったとされているが、現在では混交があったことが明らかになっている。ただし、日本人の祖先ということについての基本的なところは変わってない。

 

単行本、219ページ、NHK出版、2007/2/24

 

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)

  • 作者: 篠田謙一
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2007/02/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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