(監修:佐々木 秀憲)
やきものについての解説書。陶磁器の名品の写真が豊富に掲載されている。全てではないもののその多くがカラーページになっていて印刷も良いため、作品が映えている。また、産地別の解説がわかりやすい。文章と写真と図示によって各地のやきものの特徴がつかみやすくなっている。主なものをいくつか挙げておく。
・会津本郷焼:素朴でしっかりした形、見る度に表情を変える飴釉の光沢、陶器と磁器の2つの顔。
・益子焼:民芸運動の流れを汲んだ実用性重視、多様な陶芸家の自由な作風、難しい土と釉薬の融合。
・笠間焼:関東最古、時代のニーズに合った作品、巧みな釉技、粘性の強い土で作られる壊れにくさ。
・九谷焼:加賀百万石の庇護、青出の迫力、大胆な絵模様、窓絵、地紋つぶし、透明感のある青い地肌。
・美濃焼:市野・織部・黄瀬戸・瀬戸黒の4種類。釉薬による豊かな色表現。ユニークな造形美。
・瀬戸焼:「せともの」という表現に見られる焼き物の代名詞。民芸調の陶器。
・信楽焼:粘土の粒子が浮き出る土肌のたたずまい、独特の景色、狸のマスコット。
・京焼・楽焼:京焼は陶器の地肌に釉薬で化粧がけをして絵付けをした色絵。装飾性を排した楽焼は茶の湯の伝統を汲む。
・備前焼:田土が生み出す地肌の存在感、窯変の美、焼き締めの器。
・萩焼:器肌の色合いが変化する「萩の七化け」、素朴な土の肌合い、低い温度で長時間焼く。
・唐津焼:土そのものの味わい、土灰釉が生み出す光沢、多彩な装飾様式。
・有田焼:古久谷、端整で華麗な伊万里、純白な地肌に華麗な絵付け、玉のような手触りと優れた実用性。
・薩摩焼:3つの系統。「白もん」の優美さ、「黒もん」の光沢。
・壺屋焼:大胆でエキゾチックな絵模様、沖縄の生活や信仰に根ざした造形美。
国内の産地だけでなく、海外の産地についても網羅されている。中国、朝鮮、東南アジア、イスラム圏。ヨーロッパの、マイセン、リモージュ、ウェッジウッド、ロイヤル・コペンハーゲン等である。
冒頭では、次のような有名な人間国宝がその名品とともに紹介されている。濱田庄司、三代徳田八十吉、荒川豊蔵、三代山田常山、富本憲吉、石黒宗麿、近藤悠三、金重陶陽、三輪休和、十三代今泉今右衛門、十四代酒井田柿右衛門、中里無庵、金城次郎。また、終盤では、部位の名称、釡の種類、釉薬の種類、粘土、製作工程といった全般的な基礎知識が載っている。
網羅性が高い上に、まとまりがよく、特徴がわかりやすく、視覚的にも楽しめる構成になっている。
単行本、143ページ、東京美術、2010/12/1
すぐわかる産地別やきものの見わけ方改訂版 [ 佐々木秀憲 ]
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