著:ジャスパー・ウ、見崎 大悟
1.概要と特徴
日本でも浸透してきたデザイン思考について解説した本。著者のジャスパー・ウ(Jasper Wu)は、スタンフォード大学の「d.school」でデザイン思考を学び、多くのワークショップに参加しており、その経験をベースにして書かれている。
2.Design Thinkingの概要
デザイン思考のデザインは外観のデザインのことではなく、「設計」の意味になる。「対象となる人々の問題を解決する方法を設計(Design)するための考え方(Thinking)」 と理解するとよい。見ているだけはいくら教わっても泳げるようにはならないので、実践が大切。
ワークショップでは、フレームワークだけでなく、デザイン思考のマインドセットも伝える。そのためには、以下の3点を重視する。
- 参加者の多様性
- 手を動かす機会をつくる
- チャレンジしやすい環境をつくる
デザイン思考は、共感、定義、アイディエイション、プロトタイプ、テストの5つの工程から成っているが、それらを直線的に適用するというよりは、行きつ戻りつをして進めてゆく。
3.Design Thinkingの各フェーズの進め方についての説明
本書では、各プロセスをどのように進めるべきなのか、経験に基づいた知見やコツについて多く語られている。この辺はやってみたことがあるかどうかで受け止め方は変わるだろうが、例えばインタビューなどは事前にポイントを教わるかどうかで全体のインプットとなる情報の引き出し方がずいぶん違ってくるので、やってみたことが無くても、事前にポイントをおぼろげながらポイントを理解することに役立ちそうだ。ツールキットの解説は、以下のように具体的な書式例がいくつも載っているので、イメージがしやすい。
PoV(Point Of Vew)の設定のコツ。HMW(How might we…?)の作り方。ブレーンストーミングの方法。クラスタリングと投票。プロトタイプはユーザに質問したいこと・ユーザから知りたいことを具現化することがポイント。早く失敗する。テストは、事前に判断基準を決めておく。
また、ファシリテータをやる場合のコツについても1章を割いている。各フェーズを効果的に進めるアイスブレークのテクニックについてもいくつか具体的に解説してある。
4.全体について
平易に書かれていて、わかりやすい。ただ、実施事例についてはビジネス的なものはあまりなく、大学のワークショップでやるようなものが中心になっている。
単行本、224ページ、インプレス、2019/9/6