著:湯浅和夫、内田明美子、芝田稔子
著者によると、会社にとって「在庫はコレステロールのようなもの」だという。在庫は適正に管理すべきであって、不良在庫が多発するのは避けなければならない。
在庫管理についての本。これが第3版。昨今の物流を担う運送会社の人手不足、IoTなどの技術の進歩についても言及してある。画像認識はICタグをつけることなく在庫のIoT化を実現できる可能性があるので期待できると書いてある部分もある。
在庫が増えがちになるのはいくつか要因がある。まず、安全を見ようとする考えが働く。多くの会社では営業部門が在庫に影響力を持っているので、営業サイドの理論が在庫にも反映しがちである。
また、まとめ買いすることで単価が下がるような場合は一気に在庫が膨らむ場合がある。在庫の管理は、いくつ作るか決める生産数量の決定権を持つ人が行うべき。
在庫には、代表的なKPIがいくつかあり、以下のようなものが紹介されている。
- 在庫回転期間(月数)=平均在庫金額÷(年間出荷額÷12)
- 在庫回転期間(日数)=平均在庫金額÷(年間出荷額÷365)
- 在庫回転率=出荷金額÷在庫金額
- 在庫回転期間(月数)=12÷在庫回転率
- ROA(Return On Assets)=[利益÷総資本率(総資産)]x100
在庫は売上に沿って持つべきで、そのためには、売上・在庫ABCグラフを作成して可視化する。2ビン法のような不定期発注法は、欠品や過剰に気づきにくいので注意する。
定期不定量発注法は、「〇日ごと」「〇週ごと」のように、定期的に発注する期間が決まっているので、発注管理はしやすい。いつでも発注できるならば不定期不定量発注法がよい。
必要な量を読む、現在の在庫量の適正な評価、いついくつ発注するかの基本を整理しておく。
リードタイムの日数を管理する。安全在庫は、リードタイム期間に対応するだけでよい。
ABC分析で在庫品目を絞る。そもそもこの商品は在庫を持つべきなのか?という視点で仕分けしておくことも重要。
発注と在庫には関連性がある。発注間隔を短くする方が在庫は抑えられる。在庫管理を行うということは、発注支援システムの整備である。その要となるのは、発注量の計算ロジックになる。
季節波動や期末の需要集中は、その間は通常のx倍になる、というように過去実績をもとに指数化することで織り込めばよい。
適切な水準で安全在庫を維持するには、リードタイムをきちんとみること。会社として欠品率を何パーセントに設定するかを明確にして、たとえば1%とおくなら、99%のサービス率とし、標準偏差、安全係数、日数で計算する。サービス率はコストを考えながら設定する。
物流拠点の在庫は週次計画補充が基本。販売計画をベースとした生産は出荷動向とは異なるものになりがちなので、ロジスティックをベースにした生産に変えてゆくべき。
ロジスティックスは市場の出荷状況を補充の連鎖の形で動くので、市場が必要とするものしか輸送しないという形が作れるし、これに連動させることで在庫の適正化もしやすくなる。ただ、それでも実需と仮需の差が生まれるので、実需ベースにしたければ、SCM(サプライチェーンマネージメント)と連動させる。
在庫は基本的に悪であり、持たないで済むならそれに越したことはない、という視点で書かれている。
単行本、216ページ、秀和システム、第3版、2019/3/23
図解入門ビジネス 最新在庫管理の基本と仕組みがよ~くわかる本[第3版] (How-nual図解入門ビジネス)
- 作者: 湯浅和夫,内田明美子,芝田稔子
- 出版社/メーカー: 秀和システム
- 発売日: 2019/03/23
- メディア: 単行本