著:ビル・マクゴーワン、アリーサ・ボーマン、翻訳:小川 敏子
「人生のここぞという瞬間には、なにをするかではなく、なにを言うかが決め手となることが少なくない」。
話し方・伝え方の基本について解説した本。著者は元々はジャーナリストだが、そこで学んだことやひらめいたことに基づいて話し方のコーチを行うようになり、数多くの大企業の幹部やセレブにレクチャーしてきた経験を持つ。
この手のコーチングは、最初は相手からうさんくさく思われることが多いようで、しかし、そういう人でも数時間後には笑顔で感謝を述べるという。
「話す前に2度考えよ。あなたの言葉と影響力は聴き手の心に成功もしくは失敗の種をまくからだ」。(ナポレオン・ヒル)
タイトルにあるように、以下のような7つの法則としてまとめてあることが中心になっている。
- 切り札を隠すな
- 映画監督になれ
- ソースのように濃く、短く
- 戦略的に遅らせよ
- 信念で信頼を勝ち取れ
- 話すより聴く
- 悟られずに話題を変えろ
とにかく印象的なのは、全編を通じて、話し方の技術をきちんと勉強し、事前に徹底的に準備して練習を積むことの大切さを強調している点である。
「仕事で聴衆とカメラの前に立つ、いわゆるプロの多くはアドリブをしようなどとは夢にも思わない。その逆だ。彼らは皆、本番のずっと前に話すことを決めている」。
すべては練習の中にある。けっして、「準備は必要ない」などと、考えてはいけない。言いたいことが伝えられなかった、逆に、余計なことを言ってしまったと後悔することがないようにするにも、準備が大切。
自然体ではいけない。いくら自然体を大事にしても、報われることはない、と考えた方がいい。本当の自然体は、かならずしも相手にとって好ましいものではないからだ。
相手が好感を持つような自然体に見えるように、服装や身だしなみにはあらかじめ十分に注意しておかなければならないし、歯は白くしておくべきだし、姿勢も大切だ。
「わたしが定義する完璧とは、ミスがゼロということではない。中身が充実して、肩ひじ張らず、温かく、熱意がこもったものなのだ」。
プレゼンを行うときには、はじめと最後が肝心。最初の20秒で勝負が決まる。そぎ落とすほど効果的、シンプルであるほど魅力的。普段から、印象的なエピソードを集めて使えるようにしておくとよい。
有意義な内容であることは大前提だが、自信をもってそれを伝えるようにすること。スピード超過は危険なので、安全なスピードで話すように心がける。
よい会話をするには、相手について事前にきちんと調べておくこと。そして、相手に対して十分な興味と関心を払うこと。質問に対しては、なんでも正直に答えればいいというものではない。
頼み事はせす、アドバイスを求めるようにする。つまり、「お時間をいただけますか?お願いしたいことがありまして」より、「お時間をいただけますか?ご意見を聞かせていただきたいのですが」の方が、アポを取れる可能性が高い。
パネルディスカッションなどを想定した司会についてのアドバイスは、シンプルだがよくまとまっている。
- 時間、トピックの数、参加者の人数をもとに、どういう組み立てにするのかを計画する
- 冒頭の司会者のコメントは、「ソースのように濃く、短く」
- あえて挑発的な質問で始めれば、ディスカッションは熱を帯びる
- 長短織り交ぜた質問をする
- 多角的な質問は避ける
- 先に誰に対する質問なのかを明らかにしない
- 質問の根拠となる知識を長々と披露しない
- トピックについて各パネリストたちの立場を考慮し、対立する視点を並べるようにする
- 複数のパネリストに同じ質問をしない
- 2人のパネリストが論争を始めたら、内容が繰り返しになるまでは介入しない
- 次の質問で頭をいっぱいにしない
- パネリストが軽視していることや触れたがらないことで興味深いと感じられるものがあれば、すかさずスポットライトを当てる
- 示唆に富む、将来を見据えた質問は最後にする
面接は質疑応答ではなく、プレゼンだと考えること。結婚式のスピーチなどは、即興はさけ、何を話すのか事前にきちんと計画を立てて準備すること。
成功する話し方とは、そのために意識して日々学習し、十分な準備を重ねること。当たり前のように思うかもしれないが、そう思う以上にそれが大切なことなのだ、と痛感させてくれる点で、読んだ意味はあった。
単行本、308ページ、日本経済新聞出版社、2015/3/19
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