密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

歩兵の戦う技術 あらゆる戦場で活躍する兵科の秘密

著:かの よしのり

 

 戦車・攻撃機・大砲に比べれば、歩兵の破壊力はどうしても限られる。しかし、いくら兵器が進歩しても、最後に土地を占領するのは歩兵である。本書は、現代の歩兵について解説した本である。

 

 戦闘を行う集団としての最小単位は中隊であり、兵士の賞罰権限は中隊長にある。人数は100~200名ほど。最小単位としては10人前後の分隊・班があり、3~4の分隊で小隊を編成する。連隊は作戦の基本単位。さらに複数の連隊を束ねた師団がある。自衛隊の場合、旅団は師団の半分程度。数個師団をまとめた単位が軍。

 

 現代の歩兵の装備は12kgあるといわれる防弾チョッキをはじめ、暗視装置・科学防護衣もあり、重装備化している。合計で40kgを超えるといわれる。さらに部隊で共用するものも分担して運ぶ必要がある。

 5.56mm弾用の小銃は軽く、300m以内の戦闘を想定している。現代の銃剣はサバイバルナイフであると同時に、鉄条網を切るためにも使える。本体だけで10kgある軽機関銃は分隊に一丁。中隊には7.62mmの機銃も配備される。

 

 多くの物資を必要とする現代の軍隊では兵站はとても重要。食事は炊事トレーラーを出して用意するのが普通。宿営は、先発隊を出して決める。トイレの数は人数の8%は必要。偽装。早駆けのときは4秒以上敵に姿を見せない。いろいろある匍匐前進の仕方。射撃。夜間戦闘。鉄条網突破。手りゅう弾。

 

 行軍の計画と準備。前衛、側衛、本隊、後衛。時速4kmで1日32km歩く。斥候はドローン。自隊が持っている手段で移動すれば行軍だが、輸送隊やヘリ隊に運んでもらうときには輸送隊長が指揮官であって歩兵隊長には移動の指揮権はなく乗客である。

 

 地雷の処理。障害物と側防火器の処理。戦車の支援。突撃。敵が頑強に抵抗しているときには突撃はできない。歩兵はあまりに弱い存在であり、現代では装甲車に乗せるのが当たり前。

  防御陣地。地雷。鉄条網。野戦築城。3日かけて作った陣地は3日もち、10日かけて作った陣地は10日もつという。反射面陣地。敵情監視。1000mの距離で1mのものをみたときの角度がほぼ1ミルになる円周を6400分割したミルという単位の便利さ。積雪寒冷地の特殊性と作戦。装備や補給品の凍結防止。雪中の行軍。

 

 「戦争のプロになりたくて志願する人など1,000人に1人いるかいないかです。志願者は、ほかに職のなかった社会のおちこぼれ、ということのほうが多いのです」などということも書かれている。志願制だろうと徴兵制だろうと素人を一から教育するのは同じ、現代はハイテク兵器が多いから志願兵でないと使えないというのも誤りであり今の戦車の方が昔よりずっと運転しやすいという。

 

 新書サイズだが、カラー印刷。見開きで左が文章、右が写真もしくは図解という構成である。

 

新書、192ページ、SBクリエイティブ、2018/11/16

歩兵の戦う技術 あらゆる戦場で活躍する兵科の秘密 (サイエンス・アイ新書)

歩兵の戦う技術 あらゆる戦場で活躍する兵科の秘密 (サイエンス・アイ新書)

  • 作者: かのよしのり
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2018/11/16
  • メディア: 新書