密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

科学の迷信や、歴史に残るねつ造事件。日本の石器発掘事件も。「科学の迷信 世界をまどわせた思い込みの真相 」

編集:ナショナル ジオグラフィック

 

 科学の迷信や、歴史に残るねつ造事件を100件取り上げて紹介した本。ナショナルグラフィックスらしく、写真が多く掲載されている。100件の中には、日本の旧石器発掘ねつ造事件も取り上げられている。

 

 ジャンル別に、「物理と科学の迷信」「古代の迷信」「人体の迷信」「生物の迷信」「地球の迷信」「宇宙の迷信」に分けられている。以下のようなものが登場する。

 

・ニュートリノが光よりも速いという計測結果は誤り。

・沸騰したお湯に塩を入れても、100度のお湯が100.4度になるだけで上昇効果は誤差の範囲。

・ツタンカーメン王の呪いは誤り。

・ネス湖のネッシーは存在しない。

・エイリアンの死体解剖映像はねつ造。

・抗生物質はウィルスには効かない。

・媚薬の大半はプラセボ効果。

・地球は平らではない。

・地球は空洞ではない。

・関節を鳴らしても関節炎になることはない。

・砂糖が多動性を引き起こすことはない。

・トイレの水ぐらいでは北半球と南半球で渦が逆になることはない。

・ストレスが潰瘍の原因になるわけではない。

・コウモリのすべての種はよく目が見えている。

・アメリカの月面着陸はでっち上げ、ということはない。 

 

西洋と日本人の感覚の違いを感じるものもある。例えば、以下のようなものである。

・骨相学に科学的な根拠なし。

・メアリー・トフトがウサギを産む。

・機械仕掛けのチェス名人。

・春分の日、卵はまっすぐに立つ。

 

多少、紛らわしいものもある。例えば、以下のようなものである。

・寒いから風邪をひくわけではない → 冬は閉じこもりがちになるし、乾燥している冬の方が風邪のウィルスは長生き。免疫力も冬の方が落ちている可能性がある。

・ブロントサウルスという恐竜はいない → アパトサウルス属のいくつかの種の異名。ただし、最新の統計手法による分類だと独立種の可能性も出ている。

・ダサダイ族 → 石器時代の暮らしそのまま続けてきたということはなく、比較的浅い時代に他の先住民族から分化したもの。

・ツングースカ大爆発 → 爆発は事実。陰謀ではなく、小惑星か彗星が地球に到達する前に大気圏で爆発したと考えられる。チェコ湖という湖はこの爆発でできた可能性がある。

・右脳と左脳の分化 → 左右の脳半球の分化自体は事実。ただし、左脳と右脳は連携しており、自己啓発本に見られる引用の仕方には誤用がみられる。

 

 IPCCのレポートの不備を突いて、気候変動など起きていないという主張を展開する人は日本にもいる。しかし、本書は、大気中の1950年以降CO2のレベルは劇的に上がっており、海水温が世界記録を更新し続けていることを挙げて、気候変動は事実であると断定している。

 

ムック本、176ページ、日経ナショナルジオグラフィック社、2018/8/31

科学の迷信 世界をまどわせた思い込みの真相 (ナショナル ジオグラフィック 別冊)

科学の迷信 世界をまどわせた思い込みの真相 (ナショナル ジオグラフィック 別冊)

  • 作者: ナショナルジオグラフィック
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2018/08/31
  • メディア: ムック