著:内藤 直子、吉原 弘道
日本刀の名品を紹介しながら、その特徴と歩みを独自の視点で語った本。薄いムック本であるが、オールカラーで写真中心の構成である。刀剣そのものだけでなく、拵(こしらえ)についても紹介している。刀剣の姿は時代によって異なるが、その違いについても比較図を用いて書かれている。
平安時代:三日月宗近、備前国包平(かねひら)
鎌倉時代:長船光忠、明石国行、粟田口国久、当麻国行、山鳥毛、日向政宗
室町時代:長船則光、和泉守兼定
桃山時代:山伏国広
江戸時代:津田越前守助広
明治時代:月山貞一
アイヌの腰刀、刀剣の価値づけに大きな役割を果たした本阿弥家と埋忠家、刃文を失った名刀を焼き直して再生すると同時に写しも残した越前康継の業績についても触れている。
また、現物だけでなく文書(刀剣書)についても10ページほどページが割かれている。文書には現物が失われて既に存在しない膨大な刀剣の情報が記載されているメリットがある。14世紀の「銘尽(竜造寺本)」や15世紀の「銘尽(観智院本)」といったものが紹介されている。
登場する刀剣の数と種類は少ないので、一般向けの入門書としてどこまで適当なものかはわからない。むしろ、日本刀の魅力と特徴のエッセンスをコンパクトに伝えるにはどうすればいいか腐心してまとめられた感じがする。
単行本、79ページ、東京美術、2018/10/6
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