著:森重功一
日本は金型生産では世界第1位。技術水準もきわめて高い。金型は構造が複雑で高い精度が求められ、製作が難しい。このため、金型生産は日本の工作機械や製造系ソフトウェアの進歩を牽引してきたともいえるという。そのような金型産業は、平成26年の工業統計によると、型別の金型生産額のシェアで次のようになっている。
1位 プレス型:37.1%
2位 プラスチック型:31.5%
3位 鋳造ダイカスト型:7.9%
4位 鍛造型:3.8%
5位 ゴム型・ガラス型:3.4%
その他:16.3%
ただし、日本の金型市場は生産拠点の海外移転などによって縮小傾向にある。従業員20人以下の中小企業が9割を占めていて、下請け性が強く、価格低減圧力に弱い。前払い制度がある海外と比較して日本は検収後の後払い制なので中小企業の資金繰りの問題も生じやすい。資金力のある海外メーカーが最新設備を積極的に導入しているのに比べ、設備も古い。高い精度を求められない金型や汎用製品の金型を中心に新興国に追い上げられている。海外の最新技術を取り入れたり、ネットワークやCAD/CAM/CAEなどのIT活用においても改善の余地がある。
金型技術と産業についての本。図解や写真を多く掲載してあり、わかりやすい。技術的には、三大金型として、射出成形、プレス、ダイカストの3つの成形方法と金型の仕組みを中心に解説が行われている。
射出成形はプラスチックの製品の大量生産で一般的な手法である。プレスは一瞬で金属部品の形を作る。ダイカストは溶かした金属を金型に圧入して鋳物を作る。いろいろな金型の技術が写真や図を交えて載っている。
金型は地味な分野だ。われわれはついつい、大手企業がたくさんある完成品メーカーに目が行きがちである。しかし、この産業は、機械や素材産業において、なくてはならないモノづくりの重要な基礎になっている。特に、自動車産業はいろいろな金型の技術がなければ成り立たない産業だということもよくわかる。
そんな一般的にはあまり知られてない金型の世界を、前提知識がなくてもわかりやすく理解できるように真面目に書かれている。けして売れ筋ではないかもしれないが、こういう本はこういう本で大切である。
単行本、190ページ、秀和システム、2018/6/30