著:イアン・スチュアート、訳:川辺 治之
無限について、昔の哲学的な主張も紹介しながら、エッセイ風に紹介した本。著者はイギリスの学者。最初に、無限に関する以下の9つの課題が載っている。
・最大の数:∞=∞+1の両辺から∞を引くと、0=1?
・正方形の対角線:正方形の対角を階段状につなぎその階段数を無限に細かくしてゆく。
・円の面積:円周率π。
・電灯のスイッチ:1秒間にスイッチのオンオフをどんどん早く繰り返すとどうなるか。
・袋の中の玉:無限個の玉を空っぽの袋に毎回9個ずつ増えるように出し入れを繰り返す。
・3分の1の表記:3.333333…と書くとすると、どこかで打ち切るので、3分の1は実際はそれと同じかより小さい?
・平方数と自然数:等しい、多い、少ないという概念は、有限量のみで無限量にはない?
・ヒルベルトのホテル:無限に部屋があるホテルで客が来るたびに前の客に部屋をひとつづれてもらう
・グランディの無からの創造の証明:ギドー・グランディという人が、二項定理を使って無限級数から、0=1, 0=1/2を証明した。
このような例から、無限についての歴史上の考察や微積分の登場、フーリエ級数、相対性理論、宇宙の大きさ、哲学的な議論、といったことについて書かれている。特に、カントルについては多くのページが割かれている。理系の素養はあった方がいいが、高度な数学の知識はいらない。
悪い本ではないが、正直、期待したほどの広がりはなく、翻訳本で多少読みづらいところもあり、全体的にはまあまあといったところ。
単行本、176ページ、岩波書店、2018/5/19