著:佐藤 尚之
単発的なコマーシャルを繰り返して目先の売り込みを優先するよりも生活者の課題を解決して笑顔になってもらうことを優先し、消費者と長期的な関係を築くと同時に、そのための手法として全体の20%程度のファン層さらにはその中の一部のコアファンの支持を強くすることが重要であると説いている本。
ファンとは、商品そのものというより、商品を支える価値を強く支持している人である。だから、その価値を中心にコミュニディを作るとよい。そのためには、以下の3つを強くする施策を打つ。
・その価値自体をアップさせる → 「共感」を強くする
・その価値を他に代えがたいものにする → 「愛着」を強くする
・その価値の提供元の評価・評判をアップさせる → 「信頼」を強くする
さらに、この「共感」「愛着」「信頼」をさらに強くして、LTV(Life Time Value)を挙げてゆく。
・共感 → 熱狂
・愛着 → 無二
・信頼 → 応援
ファンベースで有効な方法のひとつは、開示である。商品力や品質の根拠となる研究開発や製造工程、制作過程といった信頼される根拠をきちんと見せて、「この企業の商品は間違いない」「あそこはちゃんとしている」といった信頼感を勝ち取る。特に、人間を効果的に見せることは効果がある。
共創はその企業の価値をわかっているコアファンとやらなければ意味がない。コアファンを作るなら、万人受けする要素より、偏愛されるポイントを前面に出した方がいい。ファンベースを構築・維持するためにはへりくだる必要はない。ファンを大切にし、ファンベースに基づいて中長期の価値や売り上げを高めてゆくことが、これからの時代はますます重要になる。
尚、本書には、カゴメについて、「カゴメは、20年かけて、企業理念に共感してくれた個人株主をじわじわ増やしてきた。そして今や、なんと総株主のうち99.5%が個人株主であり、『ファン株主』なのである(そのうち3分の1が主婦層だというのもものすごい)」と書かれているところがある。しかし、これは完全な間違いである。
実際、「会社四季報」によると、カゴメの株主構成は、自己株10.6%、日本トラスティ信託9.4%、日本マスター信託5.0%、ダイナパック4.9%、日清食品HLD1.5%、蟹江利親1.4%、蟹江英吉1.1%、JPモルガンチェース1.0%といった順番になっている。こんなことは簡単に調べられる。本を書くなら、ちゃんと裏とりをしてから書くべきである。
新書、288ページ、筑摩書房、2018/2/6