著:パトリック・ハーラン
話術についての本。著者によれば、話す力は生まれつきのものではないという。そして、アメリカでは小さい時から、人の話を聞いてそれにさっと反応することや、自分自身の考えをはっきり言うことを徹底的に教え込まれるという。
特徴としては3点ある。第一に、ユーモアを交えて、易しくわかりやすく書かかれてあって、読みやすい。第二に、初めて会う人との雑談から、議論、ディベート、スピーチ、プレゼンというように、状況別にポイントが示されている。第三に、日本人同士の場合だけでなく、欧米人と話すケースも意識している。
例えば、知らない人ばかりのパーティにおいてどうするか。以下のようなことを意識して質問をすればいいいという。
・いつでも使える質問を頭に入れておく(相手の趣味、出身地、住んでるエリア、他)
・服装など見た目をヒントにする
・返ってくる答えにまた質問する
・話が膨らむ質問を意識する
・共通点を発見したら自分の情報も注入する
・わからない分野ならしったかぶりせずに、素直に質問する
また、説得力を上げる話し方を支える3つのファクターとして以下のものを挙げた上で、個別の解説を行っている。
・エトス:人格的なものに働きかける説得要素
・パトス:感情に働きかける説得要素
・ロゴス:頭脳に働きかける説得要素
資格を考える、相手を考える、面白さを考える。狙いたい感情を決める。ディテール込みのストーリーを使う。けなし文句は使わない。論理的な話し方。正しくなくても説得力があること。韻を踏む、対比する、五・七・五調などでリズムを作る。呼びかけ。フレーミング。演繹法と帰納法。相手を知る、自分の目的を決める、目的達成につなげられる弁論術を選ぶ。ディベートの勝敗の85%は見た目で決まる。批判的思考の大切さ。「騙す話術の見抜き方」は、特に印象に残った。
一方、国際交流においては、積極的にコミュニケーションしないとその場にいる必要が無いし他のメンバーにとっても意味が無いとし、グローバル人材を目指すには、日本と欧米の両方のコミュニケーションスタイルが使えるようになれれば強いと述べている。池上彰との対談も入っている。
簡単に読めるが、的確なことが、具体的に、無理なく、大変よく整理されてまとめられており、なかなかいい本である。
新書、255ページ、KADOKAWA、2014/4/10