著:大山 健太郎
42歳の若さで末期ガンの父親が他界し、社員5人の関西の小さなプラスチック工場の後を継いで社長になったのは19歳のとき。
不眠不休で働き、工夫を重ね、何度か危機に直面しながらもそれを乗り越えて現在の『アイリスオーヤマ』を築いた大山健太郎氏が日本経済新聞に連載した「私の履歴書」が元になっている本。
この企業グループは現在では年間売り上げ3400億円、工場が国内13か所、海外11か所、従業員数も9600人になるという。後半では、社員へのメッセージをまとめたもので構成されている。
脱下請けを目指して開発したプラスチック製漁業用ブイ。農業用にも進出してプラスチック製の育苗箱を開発して成長する。
石油ショックのときになめた辛酸とそこから得た教訓。家庭用園芸での需要創造。ペットブームに火をつける。クリア収納などの新たなアイディア。「メーカーベンダー」の道。海外進出。セールス・エイド・スタッフ制度。ネット通販。チトセ・ホートク・ダイシンの買収。旧三洋電機社員の採用。
営業利益率10%の死守。地域活性のための手伝い。日本型経営への取り組み。海外子会社からの配当を本社に還流させず現地に留め置く。非上場を貫く理由。同族経営の強みを生かし、弟たちや息子を適材適所に配置して成長に生かしている。
1998年以降、売上高に占める新商品比率を50%以上という水準を守り続けているというのは驚いた。いいものを開発しても、そのうち他社に真似され、価格競争に陥る。クリア収納がいい例だという。だから、次々新しい企画を生み出す。毎週月曜日はプレゼン会議。1件5分か10分。新商品企画、販売チャネル、納入価格、販促キャンペーンなど、社員の提案を毎回約60件吟味するという。
「本質的、多面的、長期的」という3つの考えに支えられた経営判断。サッカー型人事と2車線人事。下位10%の社員にはイエローカードを出すという。社員向けのメッセージには、単なる企業理念の話だけでなく、「脳を活性化し、独創的なアイディア創出を」といったような創造力を啓発するメッセージにも力が入っている。また、企業成長の5原則として以下を挙げている。
1.積極経営なくして成長なし。リスクを恐れず、果敢にチャレンジ。
2.現場視点によるビジネスチャンスの発見と提案
3.自立型マネジメントによる任せる経営
4.給与は高く、人件費は低く
5.常に自己改革
冒頭部分は、東日本大震災のときの対応に多くのページが割かれている。開発拠点や情報システムの中心を兼ねた主力工場が宮城県にあったからだ。人々が必要とする日用品をたくさん生産する会社でもあったので、赤字覚悟で物資の確保を行って被災者の方々へ供給した。
原発稼働停止から節電需要を予測して先手を打ち、LEDを増産して前年同月比受注量3~5倍の受注量を得る成果をあげた優れた商売人らしい話も紹介されている。
父親から引き継いだ小さな町工場からここまでの企業を作っただけあって、今までの歩みの話も面白いし、考え方ひとつとってもためになることがいくつもある。古希を迎えても毎朝2㎞歩き、毎週500m泳ぐという。ユニークなメッセージもいくつもあり、ためになった。
単行本、248ページ、日本経済新聞出版社、2016/12/8
アイリスオーヤマの経営理念 大山健太郎 私の履歴書 [ 大山 健太郎 ]
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