編集:ポストメディア編集部
1本を除き、雑誌で連載された漫画家のインタビューをまとめて一冊にした本。全編白黒。各マンガ家の簡単なプロフィールや作品のレビューもついている。本書の中心であるインタビューの内容は結構面白い。いくつか拾ってみる。
「読み切りはその1回のために設定を考える。舞台も設定も、どんでん返しやオチのためだけに作れるんです。… (中略)…ただ、連載は長くやっていくことになるから、動きやすいキャラクターと、彼らが動き回りやすい舞台を作る感じですかね」(石黒正数)。
「自分の頭の中で考えたファンタジーなんて、たかが知れている。これは宮崎駿さんの言葉なんですけど、ファンタジーだからこそしかりとした土台がなきゃいけない」(石川雅之)。
「ウチの母方の家系は皆、長生きなんですよ。一体、何歳までマンガを描かなきゃいけないんだろう、みたいには思う(笑)」(ゆうきまさみ)。
「いまだにマンガ家って名乗るのは気が引けるんですよね…。15年以上経って、ようやく親には理解してもらえるようになりましたけど、最初のころはずっと水商売やっているんじゃないかって思われていたみたいでしたし(笑)」(星野リリイ)。
「やっぱり主人公の魅力が伝わらないと、何を描いても読者に振り向いてもらえない。そこが根底にあると思うんです。むしろ、知識は少しずつつけていけばいい」(鈴木央)。
「マンガってどれだけノンフィクションをやろうと思ってもフィクションが入ってきてしまう。…(中略)…であれば、最初からフィクションとしてやったほうがむしろ描ける」(木尾士目)。
「(編集者の)武者さんは『人の心が変わるのがドラマだし、感動なんだ』と。『それ以外のネームは見ないよ』って、(何を描いてもいいという中で)そこに一本道を通してくれたんです。それからは『人間の心が変わるというのはどういうことなんだろう?』と考えながら描くようになって」(藤田和日郎)。
「ネームはあまり描き込まないですね。ネームの時点である程度作ってしまうと、そこで飽きてしまうというか、自分の中で、面白いかどうかがわからなくなっちゃうんです」(久保田康治)。
「ロックの第1世代が音楽の可能性について思っていたようなことを、僕らの世代はアニメに対して感じていたんだと思います」(椎名高志)。
「美少女を描くのって命懸けなんですよ。デッサンが狂って可愛くないと致命的だから、本気で描くしかない」(赤松健)。
若い時の苦労を苦労とも思わないような懸命に描いていた時代のこととか、マンガ家になった経緯とか、エピソードとしてはそういうまた有名でなかったときの話が結構面白い。あと影響を受けたものの話も。作品の裏話もあちこちにある。
まったく大変な仕事だと思うし、そのように語っている人も多いが、とはいえ自分に会社勤めなんてできないからこれがよかった、なんていう人もいて、それはそれで面白い。ただ、この本、作品のレビュー欄の字が細かすぎて読みにくい。
単行本、295ページ、一迅社、2017/7/1
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