密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

米国立公文書館に保存されていた米軍撮影の写真の数々が圧倒的。『写真が語る「特攻」伝説―航空特攻、水中特攻、大和特攻』

著:原 勝洋

 

 特攻隊について資料を中心に紹介した本。日本側の写真や情報もあるが、なんといっても米軍側で撮影された、たくさんの写真が圧倒的で目を引く。全体のうち280ページまでが写真中心の構成となっている。

 さらに、各特攻隊の編成と戦果、米軍の分析資料、簡単なQ&A及び編者のコメントが掲載されている。アメリカ側の写真や資料については、米国立公文書館II写真課に保存されているものから得ているようだ。

 猛烈な弾幕をかいくぐって目標に迫ろうとする特攻機。爆煙を上げる護衛空母「セント・ロー」。空母「レキシントン」に突入する直前の零戦。目標を目前にしながら被弾して力尽きる彗星。米軍空母の穴の開いた甲板と必死の消火活動。収納された遺体や残骸。

 飛行機による特攻写真については、1944年10月25日の菊水隊・朝日隊・山櫻隊から1945年8月15日の神風特攻第四御盾隊のものまである。攻撃を受けた米軍側で撮影されたものが中心だが、日本側で撮影された各特攻隊の出撃時の写真も載っている。

 水上特攻についても扱っている。「海龍」や「回天」といった特攻専用兵器の写真とともに、戦艦大和を中心とする天一号作戦の艦隊を、米攻撃隊が上空から撮影した写真が多く収められている。

 

 米軍側がまとめたデータも紹介されている。この情報を見る限り、少なくとも神風特攻隊が米軍の厳重な防空網をかいくぐって敵艦損害を与えた確率は、日本で広く言われてきたような低いものではけっしてない。

 著者は、「日本側が算定したよりはるかに効果があったことがわかる。航空特攻で戦死した若い特攻隊員にこの事実を伝える方法はないものだろうか」と書いている。

 平静な気持ちで見続けることが難しいリアルな資料の数々だが、歴史を語る貴重な記録である。

 

単行本、359ページ、ベストセラーズ、2006/11

写真が語る「特攻」伝説―航空特攻、水中特攻、大和特攻

写真が語る「特攻」伝説―航空特攻、水中特攻、大和特攻

  • 作者: 原勝洋
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本
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