著:吉浜 忍
沖縄の戦争遺跡について解説した本。飛行場跡、司令部壕、砲台、トーチカ、陣地壕、監視所、通信所、特攻艇秘匿壕、軍病院壕、官庁壕、御真影奉護壕、住民避難壕(ガマ)、収容所、慰霊の塔・碑というような内容になっている。冒頭部分では、沖縄戦のおおまな説明、さらには沖縄戦以前の戦争遺跡もある。
もっとも印象的なのは、陣地壕をはじめとした壕の数々と、天然にたくさん存在していたガマである。沖縄戦は『鉄の暴風』と言われ、米軍の猛烈な爆撃と砲撃によって、地上にとどまることは軍・住民ともに困難だった。よって、軍は張り巡らせた地下壕を利用して抗戦し、住民たちもガマに避難した。ガマでは痛ましい集団自決も各所であったし、米軍の攻撃対象として多くの被害者が出たケースもあったが、なんとか命をとどめるための場所としても重要だったことがよくわかる。沖縄本島だけでなく、周辺の島々の遺跡についても説明されている。
最初の4ページはカラー写真が載っているが、あとは白黒印刷。文章は淡々とかかれている。終盤では、保存や活用の歩みや課題についても触れてある。沖縄の戦争遺跡を説明した本としては一定の価値がある。ただ、せっかく貴重な戦争遺跡の情報が集められているにも関わらず、場所の情報があまり親切ではない。付録でどの辺に分布しているかなどはわかるが、それほど詳しいものではないし、大きさなどもよくわからないものが多い。また、沖縄戦年表がついていればよかった。
単行本、280ページ、吉川弘文館、2017/6/13
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