著:ウォレン・ベニス、訳:伊東奈美子
「リーダーシップの本質は、自由で豊かな自己表現にある」「リーダーになるプロセスは、調和のとれた人間になるプロセスとほとんど変わらない」
正直、いい年齢のおじさんには、ちょと手に取るのが恥ずかしくなるようなタイトルだ。しかし、リーダーシップに関する代表的な著作ということで、読んでみた。
いわゆる自己啓発本と重なるような記述が多くある。ただ、それは単純に読者に対して自己啓発を勧めているということではない。自分で自分を育て、積極的に学習し、自分を表現できるという能力をまず身につけることこそがリーダーとしての能力の原点であり、それが他人から信頼される人間になるということにつながってゆくのだということが、長年の調査結果に基づいた著者の結論なのである。
「我々は、親や、教師や友人から、自分自身になる方法ではなく、社会に適合し世間の基準に自分を合わせる方法を教え込まされてきた」
わたしたちは、自分自身になる方法よりも、まず社会に適合する方法を優先して時間をかけて学んできている。リーダーになることの難しさは、そこにある。だから、多くのリーダーが若いころからリーダーシップを発揮してきたわけではない。何かに適合することを優先的に学んできた人間が、それだけで簡単に良いリーダーになれるわけがないからだ。
つまり、リーダーシップはかならずしも先天的なものではなく、時間をかけて自己改革を繰り返し、時には失敗から学びながら、リーダーに「なる」のである。
そのような視点では、次のような、リーダーとマネージャーの定義の違いの対比も興味深かった。
「リーダーとマネージャの違いは、現状を打破した人間と現状に屈服した人間の違いだ」
「マネージャーは管理し、リーダーは改革する」
「マネージャーは現状を受け入れ、リーダーは現状に挑戦する」
「マネージャーは管理に頼り、リーダーは信頼を呼び起こす」
「マネージャーは物事を正しく処理し、リーダーは正しいことをする」
全編を通じてアメリカ的価値観一色ではあるが、リーダーになりたい人にとっても、そうでない人にとっても、一読の価値がある。
単行本、304ページ、海と月社、2008/6/24