密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

危機を迎えるサンゴ。「サンゴ 知られざる世界」

著:山城秀之

 

 サンゴについて解説した本。著者は、琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設の教授。カラー写真が豊富に掲載されていて、わかりやすく書かれている。

 サンゴは刺胞動物の一種である。イソギンチャクやクラゲに近い。植物ではない。浅い海のサンゴは、昼は体内の褐虫藻光合成によって作られた糖分を取り込み、夜は触手を広げて動物プランクトンを捕まえて食べる。余ったエネルギーは脂肪にして蓄える。モモイロサンゴなど深いところに住むサンゴは有機物を触手でとらえて食べている。

 サンゴの表面は粘液で覆われており、紫外線を吸収したり、干潮時に乾燥から耐えたり、微細なごみや細菌から守ったりしている。骨格は炭酸カルシウムでできている。サンゴの硬度は3.5程度でサンゴ(3.5)なのでゴロで覚えやすい。テーブル状あるいは枝状のサンゴは成長が早いが、宝石サンゴは遅い。寿命は種によって大きく違う。

 大半のサンゴは雌雄同体だが、雌雄異体のものもある。性転換するものも見つかっている。放卵放精型、幼生段階までポリプ内で育てるもの、様々なやり方で無性生殖するものがある。サンゴ同士の縄張り争いもあり、刺胞で相手を攻撃したり、日光を遮って餓死に追い込むこともある。ただし、無性生殖で増えたクローン同士は攻撃しあうことはない。光に向かって少しずつ移動するものもあるという。

 サンゴには、造礁サンゴ、非造礁性サンゴ、宝石サンゴに大別され、それぞれいろいろな種類がある。サンゴの枝は他の生物たちにとっても重要な場所になる。魚が棲んだり、サンゴをかじっ栄養にしたり、足場として付着したり。一方、海藻やシアノバクテリアはサンゴの競合相手となるし、天敵になるテルピオスという海綿もいる。オニヒトデも天敵として有名である。

 サンゴは細菌性の病気にかかるが、1990年代以降は世界で急激に病気になるサンゴが増えている。ブラックバンド病、ホワイトシンドローム、ブラウンバンド病などがある。サンゴの免疫機能は人間に比べると単純で大食細胞が食べて立ち向かうしかない。

サンゴ礁の白化は、主に、海水温度が上昇する夏場に発生する。近年、白化が世界的に増え続けており、地球温暖化との関係や、海洋環境の悪化との関連が指摘されている。水温が上がりすぎると、サンゴの中で光合成を担っている褐虫藻が抜け出してしまう。そのサンゴは光合成ができなくなり、脂肪を消費した後、死に至る。気候変動に連動して、サンゴの繁殖地は年間14㎞のスピードで次第に北上している。サンゴの保護や養殖の試みについても紹介されている。

 

 色とりどりのサンゴの写真を見ながら、白化によって世界のサンゴの生存環境が深刻な事態になっていることに気づかされた。

 

単行本、180ページ、成山堂書店、2016/9/13

 

サンゴ 知られざる世界

サンゴ 知られざる世界

  • 作者: 山城秀之
  • 出版社/メーカー: 成山堂書店
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 単行本