著:中村恵二、山口大樹
農水省の統計によれば、2016年の全国の農業総生産額と生産農業所得は、共に2年連続で増加。農業総生産額は9兆2025億円で、対前年比4.6%の増加という高い伸びを示しているという。
長期低迷傾向から変化が見えはじめてきた日本の農業の最新動向について解説した本。
このシリーズは他もそうだが、テーマごとに見開きで書かれてある。グラフもしくは表も適時入っている。
日本の農業はコメが中心。コメの需要は減少を続け、減反政策が無くなって2018年から補助金制度になった。1999年に食糧管理法が廃止されて食糧法が制定され、コシヒカリを中心に売れるコメ作りへの転換が進む。政府は、安定的に備蓄米を確保し、一定期間が過ぎると入れ替えて古い方は低価格で卸される。海外からの市場開放圧力も大きい。飼料用米の生産拡大も進む。
経営力の向上、輸出力の強化、海外より割高な生産資材価格の引き下げ、流通・加工の構造改革、農業女子プロジェクトのような人材強化と農村地域の活性化策、収入保険制度と農業共済、土地改良制度見直し。肉用牛・酪農の生産基盤の強化も進む。
自給率12%の国産小麦は、今までパンには向かないといわれてきたが、「ゆめちから」という品種が注目を集めている。野菜ブームに支えられ、野菜農家の所得は増加。果樹生産も農家の数は減っているが、農業所得は増加している。
農薬の出荷数量は減少傾向にあり、さらにジェネリック農薬への期待がかかっている、肥料の需要も減少しているが、今まで肥料として使われていなかった下水汚泥・鶏糞燃焼灰、堆肥等を肥料として活用する動きがある。農機メーカーは海外市場に活路を見出している。日本の種苗業界では、サカタのタネとタキイ種苗が世界のトップ10に入っている。
農業を支える金融では政府系金融機関とJAバンクが二分し、民間銀行は15%を占めるに過ぎない。ただし、地方によっては、銀行が金融支援に乗り出している。鹿児島銀行は農業法人を設立し、現役の支店長が社長を兼ねて野菜の生産から始めているという。
スマート農業を支えるハイテク技術。高圧加工商品のような様々な新しい食品加工技術。GAPとJGAPのような認証制度。遺伝子組み換え作物の食品表示問題。動植物防疫。コンプライアンス。環境保全。農村コミュニティの維持と農業。就農支援。
農業を取り巻く環境は、静かに、大きく変わっていることを、テーマごとに実感する。地味な本だが、農業の現在を知るにはいい本だ。
単行本、208ページ、秀和システム、2018/3/28
図解入門業界研究 最新農業の動向としくみがよ〜くわかる本 [ 中村恵二 ]
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