著:ドリュー・キャスパー、 NHK「ハリウッド白熱教室」制作班
NHKのEテレで放送された番組が元になっている。著者はジョージ・ルーカスらを輩出した南カリフォリニア大学の名物教授。学生との対話形式の授業そのままに、会話形式で書かれてあるのが特徴である。
脚本には、登場人物、対話、行動(アクション)、場面設定の4つが必要。出来事をストーリーとして構成し、因果関係を意識しながらそれを映画が持つ構成要素やスタイルに置き換える。物語の構造としては、以下の3種類が紹介されている。
・直線構造:冒頭(場面設定と主人公の紹介)→中間(主人公と敵役の対立)→エンディング(結末)。
・エピソード構造:飛び飛びでエピソードを語ってゆく。
・コンテキスト構造:時系列的な展開を避け、共通の雰囲気やテーマといった文脈ごとの結び付きで物語を展開する。
カメラマンは光で書く人。照明は3点照明が基本(主光線、補助光、逆光)。カラーコーディネートはまず2~3色のベースカラーを決める。舞台美術の延長にある特殊効果は「メカニカル効果」で、セットで撮影した人物と外景を組み合わせることは「インカメラ特殊効果」という。特殊メイクやCGの進歩も利用する。
撮影の基本は、「フレーミング」「ステージング」「カメラワーク」。フレームの外にあるものを意識させたり、描かないことで見る人の想像にゆだねる。フレーム内の配置、人物間の距離、身体的特徴、動きを通して様々なコンテキストを生み出す。
カメラワークは、ロングショット、フルショット、ミディアムショット、ミディアムクローズアップ、超クローズアップの6種類が基本。時間と空間は相関関係にある。主観と客観の切り替え。
編集でショットの連続性を保つ方法。映像のサイズやアングルを変えるときにはガラッと変えたほうがいい。連続性を断ち切ることでメッセージをこめる。ダイレクトカット、フェードアウト、フェードイン、スーパーインポーズ。全てを見せる必要はなく、必要なものだけを編集する。リアクションカット、ディテールカット、カットアウェイ。
セリフ、ボイスオーバー。音楽の種類、長さ、場面との組み合わせへの考慮。サウンドデザイン。音と音のモンタージュ、音と映像のモンタージュ。音は空間だけでなく時間とも相関関係にある。
本だけでは確認が難しいのが残念だが、実際の映画のシーンを使いながら例を示して映画の基本的テクニックを熱意を持って解説している。面白く読めた。
単行本、264ページ、大和書房、2015/1/22