著:鈴木 潔
アール・ヌーボからアール・デコの時代に活躍したフランスの工芸家、ルネ・ラリック(1860-1945)についての初心者向けの解説本。オールカラーで、印刷は良好。本書では、まず、造形面での特徴として、以下の4つを挙げている。
1. 不自然さを感じさせないデフォルメといった写実と抽象の融合
2. 左右対称と同形パターン反復による美
3. ジャポニズムの影響を受けた文様配置に見られる、アンバランスの中のバランス
4. 人体に動物や昆虫を混ぜるなど、異色なモチーフのコラージュ
宝飾デザイナーとして頭角を現し、美しく独特のデザインの作品を多く作る。また、富豪のカルースト・グルベンキアンとの理想的な関係を築く。
しかし、アール・ヌーボ終えんと模造品蔓延により次第に飽きられ、1906年におきた女性達がコルセットを身につけなくなるというファッションの革命が宝飾品についての嗜好への変化をもたらす。このような時代の変化に直面してラリックの作品は売れなくなってしまう。
その後、50歳を過ぎてからガラス工芸品に本格的に活路を見出し、多くの作品を残す。
カラー写真が豊富で、息を呑むような見事なフォルムの美しい作品の写真があちこちに掲載されている。日本の美術館にもこんなに多く所蔵されているのかと知った。個人的に、この芸術家についてはあまり知識を持っていなかったが、その特徴がよくわかった。
単行本、80ページ、東京美術、2009/5/30
もっと知りたいルネ・ラリック 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション) [ 鈴木潔 ]
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