著:森山 大道、仲本 剛
「そして、約半世紀。企業の広告を写すでもなく、有名人のポートレートやヌードをことさら撮るでもなく、野生動物の生態を克明に描写するでもなく、また、報道の最前線に立つでもなく。森山はひたすら街にいた」。
「アレ・ブレ・ボケ」と評される独自の作風でかつて賛否両論の議論を巻き起こしながらも、今や日本を代表する写真家の一人となった森山大道と、その写真集の出版を手掛けてきた仲本剛の共作。実際の写真やコメントを通じて路上スナップについてのノウハウを伝えるというコンセプトになっていて、森山大道の撮りおろしの写真が多く収めてあり、ミニ写真集という楽しみ方もできるようになっている。
文章は仲本氏が担当。撮影に帯同し、対話から引き出したコメントを多く入れている。一方、森山氏の写真は、以下で撮影したものが収録されている。
・砂町
・佃島
・銀座
・羽田
・国道(足尾銅山までの道)
銀座については、全てデジタルカメラでの撮影。デジタルカメラを使いはじめて「(元々大量に撮る人なのに)撮る分量が増えた」そうだが、アナログかデジタルかについては、「写ればなんでもいい」というコメントが、いかにもこの写真家らしい。
森山大道の作品は、昔からハマる人はとことんハマるのに、そうでない人にはあまり受けないという傾向があり、一部でずいぶん批判されていた記憶がある。しかし、今やすっかり大家としての評価が確立した。個人的には、この人の作品を「スナップ」という言葉を強調した枠に収めることに抵抗を感じるが、いずれにせよ、歩き回って撮りまくる姿勢に対するこだわりについては、確かに写真を撮るのが好きな人にとって参考になる部分があるように思う。
新書、206ページ、光文社、2010/8/1