密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

日本まんじゅう紀行

著:弟子 吉治郎

 

 全国のまんじゅうの逸品を紹介した本。ただし、まんじゅうの定義はこの本ではあまり厳密ではなく、どら焼きや羊羹なども含まれている。著者は米原のまんじゅう屋の出身なのだという。後半にはエッセイもいくつか掲載されている。いくつかの章に分けてお店と代表する商品の紹介が行われている。いくつか簡単に記しておく。

 

  • 両月堂のよもぎ求肥岐阜県)は、よもぎ餅ではなくよもぎ求肥
  • 儀平のうすかわ饅頭(和歌山県)はグラニュー糖を使っている。
  • 徳太樓のきんつば(東京)は、出入橋のきんつば(大阪)と伍して書かれている。
  • 大手まんぢゅう(岡山県)は、内田百閒が「饅頭に圧し潰されそうだが、大手饅頭なら潰されてもいい」と語ったという。
  • 柏屋薄皮饅頭(福島県)のパートでは、ついでに山本屋菓子店舗のうす皮饅頭(愛知県)や山田屋まんじゅう(愛媛県)をほとんど皮が認識できない皮なし饅頭だと紹介されていて、こちらもおいしそうだ。
  • 新鶴本店の塩羊羹(長野県)はわずかに塩の風味があって、歯ざわりのキレがいいという。
  • 光圀本店の夏蜜柑丸漬(山口県)は中の身をかき出した夏みかんの中に流し込んだ羊羹である。
  • 茂助だんごの玉子ぞうに(東京都)は築地市場の中にある。
  • 中西与三郎の南無観椿(奈良県)は、食べるのが惜しくなるくらいにきれいだ。
  • ふたばの名代豆餅(京都府)は、よくある「餅の中にたっぷりあんこ」ではなく、「少しのあんこをおいしい餅で包んでいる」という感じだという。
  • 大吾の爾比久良(東京都)は和菓子にしては珍しい直方体。
  • 茜丸の五色どらやき大阪府)は、金時豆・虎豆・うぐいす豆・白小豆・小豆という五種類の豆が入っている。
  • 多賀やの糸切餅(滋賀県)は白い平たい餅の上に薄紅と空色の線が描かれている。


 文章は半分エッセイ風で、著者のこだわりが伝わってくる。単なるおいしいもの紹介という感じではない。それぞれカラーの写真もついていて、いかにもおいしそうだ。

 

単行本、202ページ、青弓社、2017/1/20

 

日本まんじゅう紀行

日本まんじゅう紀行