密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

知立国家 イスラエル

著:米山 伸郎

 

 人口は少ないのにハイテク業界やソフトウェア産業において世界的な存在感があるイスラエルの秘密について歴史的な経緯についても触れながら解説した本。著者は日本の中小企業の海外展開を支援するコンサルティング事業兼商社のビジネスマン。

 人口当たりでみると、イスラエルの優秀さは際立つ。その説明がいろいろ書かれている。そもそも、金融業・科学・芸術をはじめとして歴史上に優秀なユダヤ人はたくさんいる。アメリカのハイテク企業にもユダヤ系の優秀な経営者や技術者がたくさんいる。それを考えると、ユダヤ人が建国したイスラエルから優秀な頭脳が輩出するのは自然である。ユダヤ人の歴史上の成功は生存のために知性を追い求めたという点にあり、周囲をアラブ諸国に囲まれた小さな国イスラエルにおいても生存のためには知性が欠かせない。

 一方、兵役があるし、アメリカを中心にしたユダヤ人のネットワークがあるし、ロシア系移民の頭脳をはじめ多くの移民がいる。英語率も高い。特別な教育プログラムもある。加えて、ユダヤ人ならではの教育熱心さがある。

 

 基本的に日本とは環境も条件異なる。日本が見習うところは結構限られてしまうかな、という気はする。日本との付き合いもそれほど深いものではないようだ。また、本書はエリート層を中心に書かれてある本である。後半にも書かれているように、エリート層とそうでない層との格差があるのは反面教師にすべきところなのかもしれない。イスラエルの知的エリートの優秀さの一端には触れられる。

 

新書、239ページ、文藝春秋、2017/10/20

 

知立国家 イスラエル (文春新書)

知立国家 イスラエル (文春新書)

  • 作者: 米山伸郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/10/20
  • メディア: 新書