編:岩波新書編集部
「英語のお蔭で友人や知人が増えた。世界が広がった。人生がはるかに面白くなった。感謝している」。(小林陽太郎:元富士ゼロックス社長)
古本で、お安く購入。拾い物でした。エッセイとして軽く読めますが、良い本です。
本書には、スポーツ選手、劇作家、指揮者、マジシャン、物理学者、政治家、ビジネスマン、元国連局員など、様々な分野の方が20名以上登場し、それぞれの英語にまつわる苦労話や想いを語っています。現在、安倍内閣で外務大臣として活躍している河野太郎衆議院議員も登場します。
読み終わってしみじみ思うのは、元々才能のある一握りの方を除いて、ほとんどの日本人は、英語と苦労して格闘しながら、それぞれの専門分野で世界を相手にがんばってきたのだな、ということです。
そして、印象的だったのは、本書に登場する人によって意見が分かれることと、多くの人の意見が一致していることがあったことです。
人によって意見が異なっているのは、英語学習の方法や内容、英語を教育すべき時期について。英語ができる人の間でも、このような点については必ずしも同じ意見とは言えないようです。
一方、ほとんどの人に共通する意見は、英語だけでなくそれぞれの専門分野の能力をきちんと磨くことが大切だということと、英語はできないよりできた方が絶対いいし、英語によって世界はぐっと広がるよ、ということです。
「この年齢になると、そろそろ英語で話すのは止めようと思うのだが、それでも頑張って続けている大きい要因は、日本及び日本人が外国から誤解されたり、無理解のままであったりすることがあまりにも多いと思うからである。日本人はもっともっと、自己のことを他に通じる言葉によって語るべきである。他との意見のやりとりがあってこそ、理解されるし、日本文化も磨かれてゆくのである。ひとりよがりは駄目である」(河合隼雄:京都大学名誉教授)。
「たとえ発音や文法が間違っていても、話すことで相手に伝わります。それはどちらかというと『勇気』です。それができれば、英語の上達は早いと思います。世界中に英語を話す方はたくさんいます。『あなたの訛』の英語があってもいいのではないでしょうか。『いい耳』とは相手に対する姿勢、英語に対する姿勢が、正面からぶつかっていけるということだと思います。英語は確実にあなたの世界を広げてくれるでしょう」。(引田天功:マジシャン)
学習のモチベーションをちょっぴり高めてくれる、良質でさわやかな一冊です。頑張って英語を学習されている多くの方々に一読をお勧めします。