密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

図説 英国アンティークの世界: 華麗なる英国貴族の遺産

著:小野 まり

 

 アンティークとは、作られてから100年以上経った調度品や生活用品のこと。英国アンティークは1660年からのスチュアート朝後期の王政復古期に中産階級が力を持ったことと海外貿易が盛んになったこと、チャールズ二世の海外体験といったものがきっかけになっているようだ。

 メアリー三世と夫のウイリアム三世のオランダ好みは「ダッチ様式」に反映されているという。イングランドの建築作品を集めた『ウイトルウィウス・ブリタニクス』は現在アンティークと呼ばれる品々へも影響を与える。

 ハノーヴァー王朝時代には富裕層では子供たちを数年間の「グランドツアー」と称したヨーロッパ旅行に出すことが流行し、大陸文化の吸収とそれに基づいた英国様式の発展につながってゆく。農業改革による人口増加、海外での植民地の拡大、そして産業革命によって、英国は躍進する。ここから生まれた余裕と自信と富が英国らしい生活様式やデザインの熟成を後押ししてゆく。さらに、紅茶文化の誕生が陶磁器の発展を促す。

 アンティークといっても、時代によっていろいろな様式がある。家具、人形の家、テーブル、ポーセリング、シルバーウェア、ガラス、ティアラやペンダント。伊万里焼も含まれる。英国でのアンティークハンティングについても紹介されている。また、いかにもアンティークが似合う英国貴族の館の様子についても言及されている。

 英国アンティークについてざっと概要を知るには悪くない内容である。写真もたくさん掲載されている。しかし、カラーのページも半分くらいあるが、残りは白黒のページである。今の時代、しかもこの内容で、白黒印刷はちょっと残念である。

 

単行本、127ページ、河出書房新社、2017/9/26