密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

フィンテック 金融維新へ

著:アクセンチュア株式会社

 

 FinTechの本は今やいろいろ出ている。気が付くと、この本はもう古い方だ。しかし、内容は本によって異なる。こういう事例がありますという話が中心のものは、FinTechについては全く知らない人にはいいかもしれないが、実際はちょっとネットで検索すれば集められる情報が中心であることが多い。一方、雑誌系のものについては、記者が行った当事者たちのインタビューを交えてあるものは参考になる場合がある。

それらに比べ、この本の特徴は、コンサルティング目線て書いてあることである。つまり、FinTechの本質はあくまでもビジネスモデルそのものを追及することでありそのために技術を活用したイノベーションがあるという立場から、今までの金融機関はどうするべきかという既存金融機関を意識した「べき論」に大きく力点を置いている点にある。

 例えば、FinTechの展開については、マネーフローを中心にして、「FinTechの取り込み」「金融機関内業務の刷新」「マネーフローの分散」の三段階に分けて説明している。FinTechによるイノベーションサイクルを、「サービスイノベーション」「ビジネスモデルイノベーション」「マーケットイノベーションに分けて、金融機関にとってチャレンジをマップして説明しているところもある。全体的に、読んでいて、FinTechというより金融機関向けのビジネス理論の本という趣を強く感じる。

 特に、モデル分類に基づく記述は、コンサルティング・ファームらしさを感じるところでもある。例えば、デジタル時代に対応する4つの要件として、以下を挙げている。

  1. Connected:外と柔軟につながること
  2. Analytics:ビッグデータをビジネスに活かすこと
  3. Customized:パーソナライズできること
  4. Speedy:迅速なビジネスローンチができること


その上で、そのために必要なシステム構造としては、以下を挙げて解説している。

  1. オムニチャネル・フロントエンド
  2. API
  3. ビジネス・インテグレーター
  4. リアルタイム・予測型アナリティクス
  5. トランザクション・ファクトリー


 体制や人材面についての考慮点などにもページを割いている。いろんな意味で、コンサルティング会社の人たちが、コンサルティング的な視点での理論展開を重視して書いているFinTechの本となっている。まあ、そう簡単にできるのならいいのだけれど。

 

単行本、300ページ、日本経済新聞出版社、2016/6/23

 

フィンテック 金融維新へ

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