著:池上英洋、川口清香、荒井咲紀
西洋美術の歴史を時代や特徴ごとに紹介した本。テーマごとに見開きになっている。掲載作品が多く、ビジュアル中心の構成。オールカラーで印刷も良好。
また、単行本サイズでありながら少し横が長くなっており、このおかげで作品の写真の収まりがよく、見やすくなっている。美術の分野の本なのだから、まず、見て特徴がわかる、見て良さがわかるというのはとても大切なことであり、その点でよく配慮されていると思う。222ページとそれなりに分量もある。
解説文も悪くない。美術の本の中には、著者の感情的な思い入れをたっぷり書いたものもあるのだが、この本にはそういう冗長さはない。そのかわり、文章量が多くないので、美術史にあまり詳しくない人でも読む上でそう負担にならない。また、それほど細かくはないものの、それぞれの様式や時代の作品のポイントをコンパクトに押さえたものになっている。
取り上げられている時代も幅広い。奇をてらわず、オーソドックスに、古代エジプトやメソポタミア、エーゲ文明、古代ギリシャ、古代ローマと古い時代から順に丁寧に取り上げられていて、近現代の美術もちゃんと網羅されている。加えて、内容的には絵画が中心ではあるものの、彫刻や建築もカバーされている。
「いちばん親切な」というのは売るためのタイトルづけという感じはあるが、内容と分量とオールカラー印刷であることと少し横長で見やすくなっている点を考慮すると悪くないし、お値段もけしてお高くはない。ただし、作品名や芸術家の名前は日本語表記だけで、英文あるいは原語表記はない。
単行本、224ページ、新星出版社、2016/7/15
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